ボヘミアの醜聞 原題 A SCANDAL IN BOHEMIA　　(略はSCAN) 初出 ストランド・マガジン　1891年7月 イラスト シドニー・パジェット(10枚） 邦訳・初出 「帝王秘密の写真」南陽外史訳 中央新聞　1899年(明治32）7月31日〜8月7日(不思議の探偵） 地名 エッジウェア通りセント・モニカ教会 (アドラーとノートンがホームズの介添えで挙式をあげた教会） セント・ジョーンズ・ウッド　サーペンタイン通り　ブライオニー荘 (アイリーン・アドラーの住居） リージェント街グロス・アンド・ハンキー商会 (ノートンが指輪を購入した宝石店と思われる） 事件内容 脅迫……………アイリーン・アドラー 写真奪還……………ホームズ・ワトスン・ボヘミア王 主な登場人物 アイリーン・アドラー………オペラ歌手 ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・シギスモンド・フォン・オルムシュタイン ………ボヘミア王(依頼人） ゴドフリー・ノートン………弁護士・アイリーンの夫 警察官 なし 言及されている他の事件 ・トリポフ殺人事件 (「七つの時計の事件」　ハヤカワ・ポケット・ミステリー　アドリアン・コナン・ドイル＆ジョン・ディスクン・カー共著「ホームズの功績」に収録)　 ・アトキンソン兄弟の奇怪な惨劇 ・オランダ王室の慎重を要する事件 ・ダーリントンのすり替え事件 (「蝋人形賭博師の事件」　ハヤカワ・ポケット・ミステリー「ホームズの功績」に収録)　 ・アーンズワース城事件 (「赤い寡婦の事件」ハヤカワ・ポケット・ミステリー「ホームズの功績」に収録）　 (以上五件は「語られざる事件」） その他 ボヘミア国王の正体について ・ベアリング・グールド解説と注つきシャーロック・ホームズ全集 東京図書版第5巻「ボヘミアの醜聞」P135(ちくま文庫は第3巻P208〜209)に説明有り (オーストリア皇太子ルドルフ大公説　フランツ・フェルディナンド説　プロシア皇太子説そしてプリンス・オブ・ウエールズ説） ・「同一正体をめぐるスキャンダル」　　エドガー・W・スミス著 (研究社 1973年刊　 シャーロック・ホウムズ読本ーーガス灯に浮かぶ横顔　に収録） (ボヘミア国王＝プリンス・オブ・ウエールズ後のエドワード7世説） ・「シャーロック・ホームズと『あの婦人』」　マイケル・ハリソン著 (ハヤカワ文庫　シャーロック・ホームズの新冒険 上　に収録） (ボヘミア国王＝ブルガリアのアレグザンダー皇太子説） ・「ボヘミア王の正体に関する仮説」　ジューン・トムソン著 (創元推理文庫　シャーロック・ホームズのドキュメント　に収録） (ボヘミア王＝ヘルベルト・フォン・ビスマルク伯爵説） あらすじ 1888年3月20日。結婚後はじめて221bを訪れたワトスンとホームズの元にボヘミア国王が訪れます。依頼の内容は、3日後に自分とスカンジナヴィア王女の婚約発表がある。ところが昔の恋人アイリーンがそれに腹を立て、同日に昔2人で撮った写真と手紙を相手方に送ると脅迫してきた。ぜひそれらを取り返して欲しいというものでした。翌日ホームズは馬丁に変装してアイリーンの身辺調査にあたりますが、事の成り行きからアイリーンとその婚約者ノートン氏の結婚の立会人をさせられてしまいます。結婚式の後には旅行がつきもの。そうなれば写真がとりもどせないと、その晩ホームズは非国教会の牧師に変装しアイリーンを騙して彼女の家へ入ることに成功します。そして計画実行のためワトスンが行動を開始！写真の隠し場所の確認に成功し221bへご機嫌で帰ってくる2人。ホームズがドアを開けるためポケットの鍵を探っていると、すらりとした青年がすれ違いざまにこう言うのが聞こえました。「おやすみなさい。シャーロック・ホームズさん」 　翌朝3人は意気揚々とアイリーン宅へ直行したものの、すでにアイリーンはノートン氏と旅立った後でした。一枚の写真と手紙を残して…。写真奪回には失敗したものの事の成り行きに満足したボヘミア王はホームズに指輪を進呈しようとしますが彼は拒否，かわりに彼女の写真を所望します。以後彼は彼女の事をよぶとき名前ではなくこう呼ぶのでした｡「あの女性」と……………。 解説 「あの女性」ことホームズを唯一出し抜いた女性、アイリーン・アドラーが登場するお話です。又、帰ろうとするワトスンを引き止めるホームズの名台詞「僕のボズウェル（有名な伝記作家）がいてくれないと、お手上げだからね」も出てきます。この言葉を聞いたワトスン、最初の方では結婚生活が楽しくてホームズと疎遠になっていたと言っていたのに、コロッとかわってホームズの素晴らしい仕事振りを研究するのがとっても楽しみと言い出します。メアリー(「四つの署名」依頼者でワトスンの奥さん)が聞いたらどうするつもりなのでしょうか(笑)　 あと本筋とはまったく関係がないのですが「ターナー夫人」なる謎の人物が221bのおかみさんとして登場します。お〜いワトスン。誰だよこの人！？（笑）