花婿失踪事件 原題 A Case of Identity　(略はIDEN) 初出 ストランド・マガジン　1891年9月 イラスト シドニー・パジェット(7枚） 邦訳・初出 「紛失の花婿」南陽外史訳 中央新聞　1899年(明治32）8月15日〜8月20日(不思議の探偵） 地名 カンヴァーウエル区ライオン・プレス31番地 (メアリー・サザランドの自宅の住所） トットナム・コート通りの鉛管工事店 (メアリー・サザランドの実父が経営していた） フェンチャーチ街　ウエストハウス・アンド・マーバンク商会 (ジェイムズ・ウィンディバンクの勤務先） レドンホール街の会社 (ホズマー・エンジェルの勤務先） キングズ・クロスに近いセント・セイヴィア教会 (メアリー・サザランドとホズマー・エンジェルの挙式を予定していた教会） 事件内容 「法律は君を罰することは出来ない」(ホームズ） 「鍵をかけておく限り、不法監禁罪と脅迫罪とをおかしている」(ウィンディバンク) 主な登場人物 メアリー・サザランド……………タイピスト、依頼人 ジェイムズ・ウィンディバンク……………メアリ・サザンランドの継父、 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　クラレット輸入会社の外交員 ホズマー・エンジェル……………メアリー・サザランドの婚約者、住所不定の謎の人物 警察官 なし 言及されている他の事件 緋色の研究　　　四つの署名　　　ボヘミアの醜聞 オランダ王室の慎重を要する事件(語られざる事件） ダンダス家の別居事件　(語られざる事件） ホームズが手掛けていた10〜12件の事件 (そのうちの一つはマルセイユから依頼されたやや込み入った事件） (何れも語られざる事件） あらすじ 221bの暖炉の前でホームズとワトスンが語り合っていると、つばの広い帽子を「デヴォンシャー公爵夫人」のように斜めに被り着飾った大柄な女性メアリー・サザランドがやってきます。彼女は母と継父との3人家族。彼女は仕事の収入のほかに亡くなった伯父からの遺産の利子があり、これは両親にそのまま渡しています。継父ことウィンディバンク氏は普段からなぜか彼女が外出することを大変嫌がっていました。しかしある時彼女は継父が止めるのをふりきって舞踏会に出かたところ、そこで「頬ひげと口ひげを生やし、声はささやくようで常に何時も光線よけの色眼鏡かけている」ホズマー・ エンジェル氏と出会います。 2人は瞬く間に恋に落ちますが、おかしな事にエンジェル氏が彼女にくれる手紙は署名すらタイプライター。おまけに詳しい住所も教えてくれません。ウィンディバンク氏がフランスへ出張に行ってしまった時、エンジェル氏は彼女にうるさい継父がいない間に結婚してしまおうと持ちかけます。ところが結婚式を挙げるため教会へ向かう途中の馬車の中でエンジェル氏はこつ然と姿を消してしまいます。事前に「何があっても心変わりしないくれ」という言葉を残して･･･。 エンジェル氏の行方を捜してくれと頼むサザランド嬢にホームズは「エンジェル氏のことはお忘れなさい」と忠告をします。一体エンジェル氏はどこへ消えたのでしょうか?　何故ホームズはサザランド嬢にエンジェル氏に二度と会うことはないと言ったでしょうか？ 解説 悲しいかなこの事件。法に触れていないのでホームズは犯人を罰することも出来なければ、サザランド嬢を救うことも出来ませんでした（TT）（まあエンジェル氏の一連の行動に、何の疑問にも感じないサザランド嬢も問題ですが･･･）本文とは関係ありませんが、ホームズは冒頭でさりげなくワトスンに依頼人たちからの贈り物である「紫水晶をはめ込んだ金の嗅ぎ煙草入れ」「見事なブリリアント･カットの指輪」を見せびらかしています。ホームズはワトスン以外に友達がいないので他に自慢する相手がいないのでしょう（笑）そんな友の気持ちを察して、ちゃんと「これは一体どうしたんだい？」と聞いてあげているワトスン･･･いい人だ(^^)