五つのオレンジの種


原題


The Five Orange Pips (略はFIVE)


初出


ストランド・マガジン 1891年11月


イラスト


シドニー・パジェット(6枚)


邦訳・初出


「暗殺党の船長」南陽外史訳
中央新聞 1899年(明治32)8月30日〜9月2日(不思議の探偵)


地名

アメリカ フロリダ州 
イライアス・オープンショーの農場があった

ウォリックシャー州 コヴェントリー
ジョゼフ・オープンショーの工場があった

サセックス州 ホーシャム
イライアス→ジョゼフ→ジョンが引き継いだ家があったところ

ハンプシャー州 フェアラム
ジョゼフ・オープンショーはフェアラムから帰る途中、白堊を掘り
出した深い穴に落ちて死亡

ウォータールー橋
テムズ河にかかる橋、ジョン・オープンショーはこの付近で溺死した


事件内容

脅迫、殺人

主な登場人物

ジョン・オープンショー………依頼人、事件依頼の2日前にオレンジの種を受け取る

ジョゼフ・オープンショー………依頼人の父、死の直前にオレンジの種を受け取る

イライアス・オープンショー………依頼人の伯父、最初にオレンジの種を受け取り、
               その直後死亡


警察官


なし


言及されている他の事件

・タンカーヴィル・クラブ醜聞事件
(依頼人のオープンショーは上記の事件でホームズに助けられた
プレンダーカースト少佐の紹介で訪ねて来た)

・ホームズはこの時点までに失敗を四度、三度を男に、
一度は女に出し抜かれたことがある(事件名不明の語られざる事件)
(出し抜いた女性はアイリーン・アドラー説が有力)

下記の五件は1887年に起きた事件

・パラドール部屋事件(語られざる事件)

「パラドール・チェンバーの怪事件」(ジョン・ディクスン・カー著 
創元推理文庫 エラリー・クイーン編「ミニ・ミステリ傑作選」に収録)

「パラドールの部屋」(創元推理文庫 ジューン・トムスン著
「シャーロック・ホームズのクロニクル」に収録)

・アマチュア乞食団の事件(語られざる事件)

「アマチュア乞食」(創元推理文庫 ジューン・トムスン著
「シャーロック・ホームズの秘密ファイル」に収録)

・バルク型帆船ソフィー・アンダーソン号失踪事件(語られざる事件)

・ウッファ島の具ライス・パターソン一族の奇妙な事件(語られざる事件)

・カンバーウエルの毒殺事件(語られざる事件)
(死人の時計を巻くことで事件解決)

「金時計の事件」(ハヤカワ・ポケット・ミステリー アドリアン・
コナン・ドイル&ジョン・ディクスン・カー著「ホームズの功績」に収録) 

「キャンバウェルの毒殺事件」(創元推理文庫 ジューン・トムスン著
「シャーロック・ホームズのクロニクル」に収録)

その他
「私は炉の反対側でクラーク・ラッセルの面白い海洋小説をよみふけっていた」ワトスン

あらすじ 1887年9月末、妻が伯母の家に行ってしまったのでワトスンは221bに遊びに来ていました。外はあらし。居間で2人がくつろいでいると突然一人の身なりのよい青年が訪れます。彼の名前はジョン・オープンショー。その話は深夜の無礼な訪問など気にならなくなるほど謎めいていました。彼の父ジョゼフは自転車のタイヤ製造で成功をおさめ引退。伯父イライアスは若い頃フロリダ州の農場主でしたが黒人嫌いゆえ南北戦争で南部軍に従軍。のち英国に帰国して家から一歩も出ることなく暮らし、偏屈でしたが依頼人だけはかわいがってくれました。1883年3月10日の事その伯父のもとに赤インクで“K・K・K”と書かれ中身は5つのオレンジ種しか入っていない封筒が届きました。それを見たとたん伯父イライアス氏は恐怖におののき7週間後自殺とも他殺とも受け取れる謎の死を遂げます。今度は1885年1月4日に依頼人の父ジョゼフ氏の元に同様なものが届けられ5日後また伯父と同様の謎の死を遂げてしまいました。そして2日前ついに依頼人の元にオレンジの種が送られてきたのです。ホームズはこの一連の謎の原因をイライアス氏が焼き捨てた書類にあるとみて依頼人に指示をして急いで帰宅させました。ホームズはこの書類は米国の秘密結社“K・K・K―――クー・クラックス・クラン”が関係するとワトスンに説明します。しかしホームズの行為はあだとなり依頼人は帰宅途中に死亡。ホームズはこの“K・K・K”と対決する決意をするのでした。

解説 ホームズが事件についてワトスンに語る話題の中に「緋色の研究」でワトスンがつくったホームズの知識の診断書が上ります。でもワトスンはその診断書の化学の知識を“深遠”から“おかしな偏りがある”と変更、さらに“コカインとタバコ中毒”を付け加え改ざんしています。さりげなく出会った当初より悪い診断を下しているわけですね(笑)さすがのホームズもにやりと笑っています。冒頭で「ぼくにはきみのほかに友達はいないよ」といった手前もあるかもしれません。
ワトスンに逃げられては友達が誰もいなくなる!>ホームズ(笑)