マスグレイヴ家の儀式 原題 The Adventure of the Musgrave Ritual　(略はMUSG) 初出 ストランド・マガジン　1893年5月 イラスト シドニー・パジェット(6枚） 邦訳・初出 「水底の王冠」山崎貞訳　建文館　1910年(明治43）3月 地名 ロンドン　モンタギュー街の大英博物館近く 若き日のホームズが「役に立つ人間にしてくれるやもしれぬ諸学問」を勉強していた時の下宿が有った場所 サセックス州　ハールストン マスグレイヴの屋敷がある 事件内容 地下室に閉じこめられ窒息死(事件かどうかは不明） 主な登場人物 レジナルド･マスグレイヴ………ホームズの大学時代の友人 リチャード・ブラントン　　………マスグレイヴ家の執事 レイチェル･ハウェルズ　　………マスグレイヴ家の二番女中、ブラントンの婚約者 警察官 なし 言及されている他の事件 ↓の5件の事件はホームズがワトスンと出会う前に手がけた事件で、 ホームズの大きなブリキの箱に資料が保管されている。 ・タールトン殺人事件(語られざる事件） ・ワイン商ヴァンベリー事件(語られざる事件） ・ロシアの老夫人の事件(語られざる事件） ｢ロシアの老夫人」 (創元推理文庫　ジューン・トムスン著「シャーロック・ホームズのクロニクル」に収録) ・アルミニウムの松葉杖事件(語られざる事件） 「アルミの松葉杖」 (創元推理文庫　オーガスト・ダーレス著「ソーラー・ポンズの事件簿」に収録） 「包帯を巻いた男」 (デアンドリア著　早川書房「ミステリーマガジン」1997年4月号掲載） ・蟹足リコレッティと彼の憎むべき妻の事件(語られざる事件） あらすじ 　ある冬の晩、ホームズはワトスンの前に昔手がけた事件の記録の入った箱を持って来ました―――僕の伝記作家が僕を栄光で包んでくれる前に、早まってやってしまった事件―――その中の一つが「マスグレイヴ家の儀式」でした。 　まだ探偵業駆け出しの若き日のホームズの元に大学時代の友人サー・レジナルド･マスグレイヴがやってきます。彼は父の死後、領地のあるハールストンで屋敷の管理、地方議員と多忙な毎日を送っていました。 　さて彼の家の執事ブラントンは有能な男でしたが女好きという欠点を持っていました。マスグレイヴがこれに手を焼いていた矢先、彼は夜中に家に代々伝わる儀式書を勝手に見ていたブラントンをみて激怒し、ついに一週間の猶予をあたえ解雇を言い渡しました。ところが3日目の朝ブラントンは忽然と姿を消してしまったのです。そしてその後を追いかけるように彼の婚約者レイチェルも部屋から池の淵まで足跡を残して行方不明に。 　彼女が溺死したと考えた彼は池をさらって見ましたが、死体はなくガラクタの入ったリネンの袋が見つかったきりでした。執事とメイドの相次ぐ失踪に地元の警察もついに匙を投げてしまいホームズの出番となったのです。事件の手がかりは “そは誰のものありしや？”ではじまる「マスグレイヴの儀式」とよばれる不思議な問答文でした。果たして執事は一体どこへ消えたのでしょうか？そして「マスグレイヴの儀式」の真実とは･･･ 解説 　このお話の出だしはワトスンの愚痴からはじまります。居間は二人の共同の場所なのにホームズの実験道具・書類で散らかり、壁には拳銃でV・Rと落書き？･･･そこでワトスンはホームズにいいかげん掃除をしようと持ちかけます。お洒落なくせに掃除嫌いのホームズは何とかこれを阻止せんとワトスンの前に昔の事件の入った箱を持ってくるのです。･･･なるほど･･･いやな仕事をさせられそうになったら、あらかじめその人の興味をそそるものを用意しておき攻撃をそらすんですね･･･。 　ありがとう。ホームズ！今度会社でやってみるよ(笑)