チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン 原題 The Adventure of Charles Augustus Milverton　　(略はCHAS) 初出 ストランド・マガジン　1904年4月 イラスト シドニー・パジェット(6枚） 邦訳・初出 あらしの夜　久保田正次訳 英文学　1908年(明治41年)7月定期増刊 地名 ハムステッド、アップルドア・タワーズ (チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンの住居） ベイカー街221→オックスフォード街で馬車に乗り →チャーチ・ロウで降り、ハムステッド・ヒースを歩いて→アップルドア・タワーズへ 事件内容 脅迫・住居侵入(強盗）・殺人 主な登場人物 チャールズ･オーガスタス・ミルヴァートン………ロンドン一の悪党、恐喝王 エヴァ･ブラックウェル………依頼者、ドーヴァーコート伯爵の婚約者 アガサ………ミルヴァートン邸のメイド なぞの貴婦人 警察官 G・レストレード 言及されている他の事件 ホームズはこの事件までに50人ほどの人殺しと渡りあってきている その他 ホームズとワトスンの覆面姿 あらすじ 冬の冷たい霜の下りそうな夜のこと。ホームズとワトスンが散歩からかえってくると、一枚の名刺がテーブルの上に置かれていました。「チャールズ･オーガスタス・ミルヴァートン」･･･上流階級の人々の秘密の手紙をあらゆる手段を使って入手し、それを使って彼らから大金を搾り取る(たとえ相手が破滅しても微動だにしない冷酷な人物･･･)恐喝王からでした。今回の依頼人であるエヴァ･ブラックウェルもその哀れな犠牲者の一人。7000ポンドを渡さなければ、婚約者のドーヴァーコート伯爵に少女時代に書いたラブレターを届けると脅されていたのです。ホームズはミルヴァートンに金額の低減を求めますが交渉は決裂します。考えに考えた挙句ホームズは“エスコット”という偽名を使いミルヴァートンのメイド・アガサに取り入り、ミルヴァートンの生活パターンや屋敷の情報を入手します。そしてワトスンに告げたのです。 ｢今夜ぼくはミルヴァートンの家に押し込みを働くつもりだ｣最初ワトスンは反対しますがホームズの決意は固く、2人はついにミルヴァートンの書斎に侵入します。ワトスンがドアを見張り、ホームズが金庫の鍵を開け手紙を探し出そうとしたその時、足音がこちらに向ってくるのが聞こえました。あわててカーテンの陰に隠れる2人。 既に眠っていると思われていたミルヴァートンがまだ起きていたのです。事の成り行きに固唾を呑んで見守る２人の前にヴェランダから一人のベールを被った女性が現れました。そして事態は思いも寄らなかった悲劇に発展していったのです。 解説 今回の事件は珍しくホームズは強硬手段(強盗)に出ています。ホームズの決意に最初は非難していたワトスンも結局ホームズの言葉に乗せられ(笑) （ホームズは｢君は来ちゃいけないよ｣とワトスンに言っていますが、それならば事後報告でもいいわけですし、本当は来てもらいたかったのでしょう。相変わらずひねた御仁です(^^;)） 「黒絹の覆面｣を作る始末･･･ってワトスン針仕事が得意なのね。 （S･パジェット氏の挿絵を見る限りよく出来ています）外科医だからですかね(^^;)あと聖典中天国と地獄の落差がはげしい女性が１人出てきます。ミルヴァートンのメイドのアガサです。ホームズと婚約したとってもうらやましい女性です。 たとえそのあと捨てられたとしても(笑) これは事件が終わったあとの出来事なのですが、ミルヴァートンの書斎で出会った謎の貴婦人を“昼食の途中”ホームズが誰か思い出してでかけるシーンがあります。「ベイカー街からオックスフォード街へ駆け抜け、もう少しでリージェント・サーカスという所にやってきた」とワトスンはさりげなく書いていますが、実際は左程歩道が混んでいない状態で男性の足でも20分はかかる距離･･･（高田寛氏談） ミルヴァートンの屋敷からの逃避行（推定2マイル）といい聖典中一番運動量の多い話だったんですね（笑）