| シャーロッキアンの果てしなき冒険 by 水野 雅士 |
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| ２．ホームズ物語に出てくる主な登場人物の服装 |
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| １）男の服装 （6）チョッキ（waist-coat） |
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| スーツという場合、前述したように上着ばかりでなく、上着のすぐ下に着るチョッキ（waist-coat）やズボン（いずれも共布）を含んでいますが、そのなかのチョッキについて少し細かく見てみます。ホームズ物語ではこの言葉が10回出てきますが、それらは次のとおりです。 《緋色の習作》（p43）では殺されたイノック・ドレッバーは高級ラシャ地のフロック・コートにチョッキを着ていました。また《花婿失踪事件》（p76）の依頼人メアリ・サザランドの許婚で失踪したホズマ・エンジェルの失踪当時の服装も、黒のフロックコートに黒のチョッキでありました。さらに《オレンジの種五つ》（p188）の依頼人ジョン・オウプンショウは、チョッキのポケットから、くしゃくしゃの封筒を取り出してホームズに見せましたし、《唇の捩れた男》（p237）ではホームズが、セントクレア邸で上着とチョッキを脱ぎ、ガウンをはおって徹夜の思索に入ったりしています。そのほか《花嫁失踪事件》（p374）の依頼人セント・サイモン卿は黒のフロックコートに白のチョッキという姿でホームズを訪ねています。 《白銀号事件》（p37）では、ホームズが馬扱い人をつかまえ、チョッキのポケットに人差し指と親指をつっこんだまま、つまりこれはチップを渡すよというサインでありますが、こう言いました。「あんたのご主人のサイラス・ブラウンさんに会いたいんだが──」。《ギリシャ語通訳》（p322）ではホームズと兄のマイロフトが、ディオゲネス・クラブの張り出し窓から たまたま通りかかった通行人がビリヤードの得点記録係であると推理しますが、その通行人のチョッキの上にチョークがついていたので、その男がビリヤードに関係あることは同席したワトスンにもわかりました。 《孤独な自転車乗り》（p112）の終盤では、悪漢ウッドリが仲間に撃たれてチョッキの胸の辺りから血が吹き出しました。また《プライオリ学校》（p174）に登場するホウルダネス公爵は、白のチョッキを着ていましたが、縁に時計の鎖がきらきら光っていました。さらに《ウィステリア荘》（p21）でベイカー街の部屋へ駆け込んできた依頼人スコット・エクルズに対してホームズは「髪もとかさず、服装も乱れていて、チョッキのボタンもかけ違えてしまったほどの、その一大事というのは、いったい何だったのですか」と問いかけています。 |
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