また《高名な依頼人》（p207）では依頼人の代理でホームズを訪ねたサー・ジェイムズ・デマリー大佐は、ホームズとの会話の途中で「キッドの革手袋をはめた両手を上げ」る場面がありますが、これについてちくま文庫の「詳注版ホームズ全集」（小池滋監訳）にはＷ・Ｓ・ベアリング=グールドが注釈で、ブリス・オースティンという人の面白い見解を紹介しています。それは次のようなものであります。
「考えてもみたまえ、この武骨者はまだ手袋をぬいでいないのである！ ここから（略）ホームズと握手すらかわしていないことが推測できるのである。ホームズがこの辺の事情を見逃しているはずがないと思えるし、事実見逃していない。というのは、ホームズは大佐をなぶっているからである。『煙草はおやりではないのですか』と彼はいたずらっぽく聞いている。（略）もし大佐が断わらなければ、彼は手袋を脱ぐか、（略）手袋をはめたままで煙草を吸うという面白い光景を展開しなければならなかったに違いない。しかし、大佐が断わったので、ホームズはこう続けたのである。『では、失礼して、パイプをやらせていただきます』と。」
《白面の兵士》でもホームズは、依頼人の友人の実家であるエムズワース家の老執事ラルフが黒いコートと霜降りのズボンという伝統的な服装にもかかわらず、茶色の革手袋をはめていたことから事件解決のヒントを得たのであります。
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キッドの革手袋
Sears Roebuck Catalog1897より
値段0.48ドル〜0.95ドル
(約2シリング〜3シリング11ペンス）
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