シャーロッキアンの果てしなき冒険  by 水野 雅士
2.ホームズ物語に出てくる主な登場人物の服装

 
2)女の服装

(7)手袋(gloves)



 
当時の女性は、上は大臣閣下夫人から、下はしがない家庭教師やタイピストにいたるまで、身だしなみとして手袋が必需品でありました。ホームズ物語では、手袋が以下のようなところに出てきますが、の《黄色い顔》の場合だけは例外で、事情あって肌の色を隠すために使われています。



手袋をはめている
メアリ・サザランド

《花婿失踪事件》
S・パジェット画
 

事 件 名 訳語(原文) ページ 着 用 者
四つのサイン きちんと手袋をはめて
(well gloved)
22 メアリ・モースタン嬢=依頼人
花婿失踪事件 落ち着きなく手袋のボタンをもてあそんでいた
(her fingers fidgeted with her glove buttons)
60 メアリ・サザランド=依頼人
手袋は灰色がかっていて、右手の人さし指のところがすり切れていた
(Her gloves were grayish,and were worn through at the right forefinger)
74
黄色い顔 長い白の手袋をはめて(she had long white gloves on ) 118 黒い肌の少女(依頼人グラント・マンローの妻の隠し子)
孤独な自転車乗り ホームズは手袋を外した彼女の手をとって(My friend took the lady's hand) 90 ヴァイオレット・スミス=依頼人
第二の汚点 白い手袋をはめた手を、握ったり開いたりしながら、夫人は話しはじめた
(her white-gloved hands clasped and unclasped as she spoke)
472 レイディ・ヒルダ・トリローニ・ホープ
(依頼人の一人トリローニ・ホープ大臣閣下の妻)


 以上の女性の服装に関する考察をもって、この章を締めくくることといたします。