シャーロッキアンの果てしなき冒険　 by 水野 雅士 第６章　ロンドンという舞台 ２．ロンドンにおける事件発生個所 　 　1）事件の依頼が持ち込まれた場所とロンドンにおける事件発生箇所について 　ホームズはこの巨大都市ロンドンの一角、ベイカー街を拠点として活躍することになるのですが、ホームズ物語として公表された60件の事件のうち51件については、ベイカー街の彼の部屋へ事件の調査依頼が持ち込まれ、ここを出発点としてホームズが行動を起こしたものであります。ただし、このなかには、依頼を受けたというよりは、ホームズが自分の興味から調べ始めた《青いガーネット》事件や、対決する相手がベイカー街へ直接乗り込んできて、宣戦布告となった《最後の事件》のようなものも含まれています。ちなみに、この51件以外の9件の内訳を見ますと、1件が前述した《グロリア・スコット号》で、ホームズが学生時代に解決した最初の事件であり、もう１件は《マスグレーヴ家の儀式》で、ホームズがロンドンへ出てきてモンタギュー街で開業したばかりのころの事件であります。《ライゲイトの大地主》《三人の学生》《悪魔の足》の３件はホームズが旅先で調査依頼を受けたものであり、《空き家の冒険》《瀕死の探偵》、あるいは《ライオンのたてがみ》などはホームズ自身が事件の当事者であって調査を依頼されたものではありません。《最後の挨拶》はホームズの引退後、英国の首相がサセックス州南部のホームズの家をわざわざ訪ねてきてホームズにじきじきに依頼したものでありまして、以上で合計9件となります。　 　 画像をクリックすると大きな地図が出ます。 　ベイカー街の部屋から行動を起こした51件の事件のうち、首都圏ロンドンで発生した事件は21件です。まずはその現場を地図の上でたしかめておきましょう。というのは、ホームズ物語を読む場合に、事件が起こった場所の地理的な位置関係のイメージが、おおよそでもあるのとないのとでは、物語から受ける臨場感がぐっと違ってくるからであります。上の「地図1　ロンドンにおける事件発生個所」をご覧ください。一つ一つの事件に関連してホームズやワトスンが調査のため複数の場所を訪れた事件も多いのですが、煩雑さを避けるため、ここではロンドンの行政区内で発生した21件の事件の発生現場（事件によっては複数箇所あり）だけを、地名と事件名で表示するにとどめました。