まずはワトスンの記述を検証してみると
謎の人物からの手紙には
「今晩七時、ライシアム劇場の前面にある柱の、左から三本めのところまで起こしください。
ご心配でしたら、お友だちを二人お連れください」
Be at the third pillar from the left outside the Lyceum Theatre to-night at seven o'clock. If you are distrustful bring two friends.
と記されていました。
モースタン嬢そしてホームズとワトスンが指示された時刻にライシアム劇場にくると
「ライシアム劇場の両脇の入り口には、早くも客が群がっていた。正面入り口には二輪辻馬車や四輪辻馬車がひっきりなしに横づけされ、白シャツに礼装の男性や、ショールやダイヤモンドで着飾った女性を降ろしている。三番目の柱の待ち合わせ場所に着くか着かないうちに馭者の格好をした小柄で色の浅黒い男に声をかけられた。」 と、ワトスンは記してます。
さて、謎の人物・・・サディアス・ショルトーは
「初めてお手紙をさしあげる決心をしたとき、こちらの住所をお知らせしようかとも思いましたがこちらの要求を無視して好ましくないかたがたを連れてこられては困ると考えましてね。そこで勝手ながら、あんなふうなお約束をしてお目にかかるようにさせていただきました。わたしはウィリアムズの判断を信頼しています。」と、言いました。
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疑問の「サディアス・ショルトーはなぜ待ち合わせを『夜の7時そして場所をライシアム劇場の前面にある柱の、左から三本め』にしたのか」を考えてみたのが以下の通りです。
現在のライシアム劇場の前面部分は当時と同じだそうです(右側の写真、2004年撮影）私が立っている三本目の柱のところが正面入口になります。
ライシアム劇場の正面入り口はウェリントン街にありますが、一般的な普段着で来る天井桟敷席(ギャラリー）の入り口だけはエクセター街にあります。
と言う事は正面入り口から出入りする客は「白シャツに礼装の男性や、ショールやダイヤモンドで着飾った女性」だけなのです。
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右側の画像は「AS WE WERE: THE OPENING OF THE LONDON SEASON ,1905」と言う題の絵で、お芝居が終った後の劇場前の賑わいが描かれています。
《四つの署名》事件当時のライシアム劇場の三本目の柱付近にもこのような華やかな「ショールやダイヤモンドで着飾った女性」たちがいたと思います。このような礼装している人たちにまじると日常着であるモースタン嬢一行は(男性、女性どちらも）とても目立ちます。
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モースタンが若い女性である以外に何も情報を持っていないサディアス・ショルトーの使いである馭者姿のウィリアムズがモースタン一行を簡単に見つけ出し、観察してから声をかける事が可能である時間と場所が『夜7時、ライシアム劇場の前面にある柱の、左から三本め』だったのです。
(ライシアム劇場近くのオペラハウスの正面の柱は建物の上部だけですので目印にはできませんし、入り口がすべてボウ街に面しています。馭者の服装をしたウィリアムズは正装姿の紳士淑女の中にいても上の絵の中の馭者のように不自然でありません）
(疑問・答え みっちょん） |
