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| ２．自由出版全集 新井清司編「ホームズ書誌」(ちくま文庫『詳注版ホームズ全集10』1998所収）によると、自由出版全集は戦後初めて刊行されたホームズ全集である。訳者は延原謙で、予定は全14巻。終戦の翌1946年(昭和21年)秋に発行が始まったが、この全集の刊行はすぐに行き詰まる。「ホームズ書誌」が出版を確認しているのは次の２巻だけである。 『シャーロック・ホームズの想い出・上』1946.9.5. 『シャーロック・ホームズの冒険・上』 1946.9.20. 刊行が止まった理由はこれまでほとんど説明されていなかった。しかし、謎を解くための有力な手がかりがプランゲ文庫に残されていた。自由出版社が1946-7年に発行した『探偵小説ニュース』という名前の小冊子である。そこで、初めにこの小冊子を資料に使って、自由出版全集刊行中断の理由を考えてみたい。 ここでプランゲ文庫について解説すると、前章でも触れたようにＧＨＱ(連合国総司令部)は占領開始から約４年にわたり、日本のあらゆる出版物を検閲した。参謀第二部戦史室主任のプランゲ博士は検閲のために収集された日本の出版物の歴史的価値に注目し、検閲が終わるとアメリカへ持ち帰った。現在米国メリーランド大学が所蔵しているこれらの出版物の総称が「プランゲ文庫」である。新聞・雑誌類はマイクロ化作業が完了し、わが国でも公共機関などで公開されている。 ＊『探偵小説ニュース』マイクロフィッシュ(T243)の利用について、メリーランド大学カレッジパーク校図書館ゴードン・Ｗ・プランゲ・コレクションと国立国会図書館に感謝いたします。 |
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