この事件を、隠退後に引き受けたとしており、発生年は1907年と1909年
に年代学者の間で説が分かれている。
ホームズは1903年頃にロンドンのベイカー街の下宿を引き払い、
サセックス州のイーストボーンから五マイルの地に引越した。探偵稼業か
ら隠退して養蜂と晴耕雨読など悠々自適で日を過ごしている、としている。
ホームズの隠居所はフルワース村から近いというが、これは架空の地名で
現存のどの地を比定するか諸学者の間に定説はない。記録によるとホームズ
の家はイーストボーンから五マイル、南イングランドの丘陵の南斜面上にあ
って、英国海峡が一望のもとに見渡せる場所にある一軒家となっている。
イーストボーンは英国南部、英国海峡に面した気候温暖の地で、各地から
保養、避暑、避寒を目的とした人々が集まり、一年中にぎわっている。日本
ならさしづめ熱海というところだろうか。イーストボーンの駅から海岸への
賑やかな商店街はすぐに途切れてそこはもう海岸である。広い道路と海岸の
間に遊歩道があり、そこには無数のデッキチェアーが見事に並んでいて、日
光浴をする人々は圧倒的に中・高齢者がしめている。それを取り囲むように
背景には四階くらいの建物がならび、それらのほとんどはホテルかＢ＆Ｂ
（ベッド・アンド・ブレックファスト。日本の民宿とよく似ている）である。
田園生活を送っているホームズに会えないものであろうかとここにきた。
記録をたよりにイーストボーンから五マイル、南イングランドの丘陵の南斜
面上にあって、英国海峡が一望のもとに見渡せる場所にある一軒家を目指す。
フルワース村から近いというが、これは勿論、地図には載っていない。街の
中心部から西へ行くと、海に面した丘陵の上に出る。このあたりの海岸線は
全くの白い垂直な崖となっている。ここでは石灰岩が露出しているために
断崖が白色なのだ。ホワイト・クリフというよび名を耳にされた方は多い
だろう。英国の古名「白亜の国・アルビオン」はここに由来していると言わ
れている。
