が、たとえば1892年に起きた事件とはっきり書かているウイステリア荘の場合で
すが資料の表を見ていただければお判りのように年代学者の説はバラバラです。
バラバラになる理由は皆さんもご存知のようにウイステリア荘事件でワトスンは
物語の冒頭で「それが1892年の3月末のある寒々とする風の強い日の出来事で
あったことは私の手帳をみればわかる」と書かれてますが、この1892年は兄の
マイクロフト以外、もちろんワトスンにもホームズは死亡したと思われた時期で、
ホームズはチベットなどへ出かけいた、いわゆる大空白時代なのです。それで年
代学者は1892年以外の記述をもとに事件発生日を決めているのです。
では、ワトスンが事件の発生した日を隠そうと苦心したチャールズ・オーガスタス
・ミルヴァートン事件ですがこれも資料の表を見ていただければ判るようにB-G以後
は同じ1899年となっています。これは物語に書かれているミヴァートンの住んでい
た家に電燈が有るという何気ないワトスンの記述にもとづいて「ブレンド・B-G」の
二人はミルヴァートンの住んでいたハムステッド地区に電燈がついたのが1894年で
あること、そしてB-Gはレイディ・エバァの結婚式が二週間後の18日と言う記述から
ミルヴァートン事件が1899年に発生したと、お天気などを参考にして結論をだした
のです。B-G以後の年代学者はこの説をありがたく受け入れているのです。
このようにはっきりと日付が書かれても年代学者の説がバラバラなウイステリア荘、
ワトスンが隠そうとしたけど説の一致したミルヴァートン事件、この二つの事件をみ
ただけでも事件の発生した日付を決める「大変さと楽しさ」がお判りになるかと思い
ます。それと一番重要なのはそれぞれの年代学者が自分好みの解釈を持ってい
ると言うことです。
たとえばワトスンの結婚について、B-Gは結婚３回説、フォルソムは2回、そしてホー
ルは1回説です。私はワトスンの結婚は2回、つまり最初の妻は「四つの署名」で知り
あったメアリー・モースタン、彼女はホームズが失踪していた時に亡くなり、ワトスン
はホームズが引退する前に再婚したという説です。今日はその２回目のワトスンの再婚
相手についてお話しようと思います。
(B-G→ベアリング・グールド）
