1874年に設立されたAbbey Road and St John's Wood Mutual Benefit Building Society(個人向け住宅ローン専門の金融組合)は1932年ベイカー街221B、正確に言うと221Bを含む土地(現在では215〜229)にアベイ・ハウスと言う本社ビルを建て多くのテナントを入居させましたが驚いた事にシャーロック・ホームズ宛の手紙が世界中から届き出したのです。それで会社は公報担当スタッフに「シャーロック・ホームズの秘書」の役割を受け持たせ返事を書くようになったそうです。
その後、1944年にアベイ・ナショナル・ビルディング・ソサエティ、1989年にはアベイ・ナショナルと名称変更はしましたが本社ビルは第二次大戦後に建て替えられたビルを高層化するなどの改装をして当初建てられた場所にありました。 |
それでアベイ・ナショナル・ビルディング・ソサエティ時代の1951年に大英国展(ブリテン・フェスティバル)が開催されることになり「『英国を代表』する展示品」のアイディアが公募されたところ「シャーロック・ホームズ」が選ばれベイカー街221Bの住所に建てられているアベイ・ハウスの一室にシャーロッキアン(英国風に言えばホームジアン)が協力してホームズ物語の記述を元にして用意されたヴィクトリアン風の家具、小物を収めた「ホームズの部屋」が再現されたのです。この活動を機会に1935年に結成されましたが第二次大戦中に活動を休止していたロンドン・シャーロック・ホームズ協会が再活動を開始して1952年5月に「シャーロック・ホームズ・ジャーナル」第一号を発行、展示品は1957年にアベイ・ハウスからノーサンバーランド街にある「パブ・ザ・シャーロック・ホームズ」の二階に移され現在に至ってます。
また、1985年10月には221Bの場所である玄関右側の柱にホームズのシルエットを浮き彫りにしたプレートが掲げられましたがこの時にその除幕をしたのはグラナダテレビでシャーロック・ホームズ役を演じていたジェレミー・ブレットです。 |
|
|
|
アベイ・ナショナル本社ビルの入口、この入口付近が221B
|
|
アベイ・ナショナルの活動とシャーロック・ホームズの関係はこのように商業的な関係はなくシャーロッキアンの人たちとの結びつきのあるボランティア的要素が強かったのですが1990年3月にアベイ・ハウスの20mほど北側に「シャーロック・ホームズ博物館」がオープン、博物館といってもメインは一階にある土産物店でホームズ人気(グラナダテレビのホームズシリーズが放映されたのは1984年〜1995年)のあやかり商法だとロンドンのシャーロッキアンには評判が悪かったようですし、博物館の建物は1815年に建てられた「古い建物」で階段も物語と同じく17階段である事などの理由をあげて「ホームズ博物館」こそ「ベイカー街221B」のハドソン夫人宅であったと主張、だからホームズ宛の郵便を届けるようにと郵便局にまで働きかけたのです。(博物館の実際の住所はベイカー街239) |
これには今まで専用秘書を置いてホームズ宛の手紙の返事を書いていたアベイ・ナショナル側も面白くなかったようです。しかし「ホームズ博物館」の働きかけにも関わらずその後もホームズ宛の手紙はアベイ・ナショナルに届けられホームズの秘書からの返事が世界中に送られていたのです。
ところがアベイ・ナショナルは2004年7月にGrupo Santanderに吸収合併される事になり8月にはミニチュアホームズが飾られていたショーウインドウ(↓の画像A)も閉鎖され11月には正式に合併、「改装」されると言う情報があったアベイ・ハウスも2006年6月にはこのような姿になってしまいました。
さて話はすこし戻りますが2004年9月6日にベイカー街に出かけたHIROさんは閉鎖されていたショーウインドウに貼り紙を見つけました。それはミニチュアホームズが飾られていた正面ウインドウに貼られていた「移転のお知らせ」(↓の画像B)です。そしてウインドウの両側にすりガラスで『221B』と記されている事を発見しました。内側に白布で覆いがされていたので今回初めて「221B」の文字に気がついたそうです。で、この右側の窓の『221B』の上に5センチほどのミニステッカー(画像C)が貼られていたのです。それの拡大写真が画像Dです。
現在ではベイカー街221B シャーロック・ホームズ宛に送られてきている郵便物もホームズ博物館に届けられるようになり、週に50通ほどの返事が世界中にホームズ博物館から発信されているそうですが、このような「ホームズ博物館」の勝利宣言ともとれる
221bベイカー・ストリート
シャーロック・ホームズ
博物館
のようなステッカーにシャーロック・ホームズ氏とワトスン博士の二人はどのような感想を持った事でしょう。
|
|