『宝島』を書き始めたのは1881年夏のスコットランド。きっかけはスティーブンソン自身が書いた一枚の島の地図。物語が沸きだし、15章まで執筆を。
　ところが、突然インスピレーションが枯渇して「冬をすごす予定のダヴォスへの旅行中は…ド・ボワゴベ氏の小説にわれを忘れ」る。けれども、ダボスに着くと「おどろくべし！」インスピレーションがよみがえり、「ふたたび一日一章の割で」物語を書き終えている。
　フォルチュネ・デュ・ボアゴベ(1821-91)は『鉄仮面』で有名なフランスの探偵小説作家。そこで思うのだが、もしダボスに着いたときインスピレーションが戻らなければどうなったか？代わりに探偵小説を書いていたら、ドイルの『緋色の研究』発表６年前に英国探偵小説の傑作が生まれていたのではないか？
スティーブンソンは探偵嫌いだったからこんな事は起こらなかっただろうが、ちょっとしてみたい想像です。