ボヘミア王からの依頼のあった事件(1888年3月20日)から何週間後のことです、ホームズとワトスンはベイカー街の下宿の暖炉を囲んで座り会話を楽しんでいます。
　ホームズは現実の世界に起きることの方が不思議なことが多く、小説の月並みな結末は陳腐でつまらないと言いますが、ワトスンはホームズの意見に対して、新聞に載っている事件のほうが面白みのない、低俗なものだ、と反論をします。

　そんな時です、ホームズを訪ねて若い女性が来ました。外を見ていたホームズは女性が玄関の呼び鈴を鳴らした時に「相談内容は恋愛問題しかし男性に怒りを持っているのではなく当惑しているか悲しんでいる」と観察結果を述べていると、依頼人のミス・メアリ・サザーランドが部屋に入ってきました。
　ワトスンはミス・サザーランドの外見から得た知識は「なめかしく被っている帽子、衿と袖口に紫色のフラシ天がついている上着、アクセサリー、毛皮の襟巻き」などから「全体に上品ではないが気楽でのんきで、暮らし向きはよさそうだった」
　ホームズはワトスンの見た外見以外に「手首のフラシ天に二本の線がついていたこと」と、「鼻の両わきに、長いあいだ鼻眼鏡をつけているとできるくぼみがあった」ことで近眼でタイプを打っていることが判っていました。
　では、メアリ・サザーランドの依頼はというと
「結婚式当日に行方不明になった婚約者ホズマー・エンジェルの行方を探す」ことでした。
ミス・サザーランドの話したことは
　家族構成：実母とは15歳も年下で、ミス・サザーランドより5歳2ヶ月年上の継父ウィンディバンクの三人暮らし
　実父について：生前は鉛管工事店を経営していたが、継父の勧めで4700ポンドで売却した
　継父の仕事：ワイン輸入会社の外交員
　ミス・サザーランドの収入：
　　　伯父からの遺産の2500ポンドの公債から年100ポンド(これは家計費として母親に渡している）
　　　タイピストの収入で身の回りのことをまかなっている

　ミス・サザーランドはホズマー・エンジェルの「身体的特徴」と着ていた服装を書いて新聞の「尋ね人」に出していたので、その切り抜きと、ホズマー・エンジェルの手紙を一通、ホームズに渡して帰ったのですが、ホームズは「ホズマー・エンジェルのことは自分にまかせて、忘れないさい」と忠告するのでした。

　翌日の夜の６時近くにワトスンはベイカー街に行きましたが、６時に現れたのがミス・サザーランドの継父ウィンディバンクです。
　ホームズはホズマー・エンジェルの手紙とウィンディバンクからの返信のタイプが同じ特徴であることを指摘して、ホズマー・エンジェルと継父のウィンディバンクは同一人物であること、犯罪にはならないけど「残酷で自分勝手で不人情なこと」をミス・サザーランドの実母とたくらんで実行したことを糾弾したのですが、罰する法律がないのでベイカー街の居間から逃げ去るのを止めることは出来ませんでした。