銀行につくとメリウェザー氏の案内で巨大な穴蔵のような地下室に入りました。メリウェザー氏の説明では銀行の資金を強化するために借りたフランス金貨が三万枚が保管されているのだそうです。不用心にもメリウェザー氏が地下室の床を叩いた時に下がすでに空洞なのがわかったので、四人は静かに賊が現われるのを待つことにしました。
　待つこと1時間15分、床石がはね起され、一人の男が出ててきましたが、これが質屋の店員スポールディングことジョン・クレイでした。そして、一人逃げたのが赤毛のダンカン・ロスと名のっていた男でしたが、 質屋の入り口には三人の警官が見張っているので逃がすことはないように手はずは万端です。

　すべてが終わり、明け方近くベイカー街の部屋でソーダー割りウイスキーを飲みながら聞いたホームズの説明は
　●赤毛組合の広告、大英百科事典の筆写は質屋の主を毎日外出させるため、と言うのは最初から判っていた。
　●動機については、質屋には14歳のメイドしかいないので恋愛沙汰は問題外。質屋には貴重品はない。
　●店員が写真が好きで地下室にいる事が多い、店員の人相からクレイという危険人物であることが判った。
　●地下室から他の建物に向かってトンネルに掘っているのだろう
　と、ここまでベイカー街で質屋のジェイベズ・ウィルソンの話を聞き、熟考してホームズには判っていました。
　 そして
　○サクス・コウバーグ・スクウェアの質屋の前の敷石を叩き、空洞がないことを確認。
　○道を聞く振りをして、質屋の店員の「ズボンの膝」の汚れをチェックする。
　○質屋と背中合わせにある建物がシティ・アンド・サバーバン銀行であることが判った。
　○今日は土曜日なので、逃亡するのに二日間があるので、決行は今夜だ、と判った。
　○音楽会が終った後にスコットランド・ヤードと銀行の頭取を訪ねて説明をした。

　と、ワトスンには考えもつかなかった思考の経緯だったのです。
　 しかし、ワトスンの「じつにみごとな推理だ」という感嘆の声に「おかげで退屈しのぎができた」とホームズは言うのでした。