シャーロック・ホームズを演じたウィリアム・ジレット
　コナン・ドイル原作　コナン・ドイル、ウィリアム・ジレット共同脚本　舞台劇「シャーロック・ホームズ」が出来上がるまでには「ホームズ脚本の冒険」と言ってもよいほどの物語がありました。
　シャーロック・ホームズを最初に戯曲化したのはコナン・ドイルでした。「シャーロッキアンの優雅な週末」などによると1897年末頃にコナン・ドイルは「若かりし頃のホームズとモリアーティ教授」が登場する脚本を書き、この脚本が巡り巡ってウィリアム・ジレットに渡ったのです。
　このコナン・ドイルの脚本にはラブ・ロマンスがなかったのでジレットはコナン・ドイル宛に「ホームズを結婚させてもよいか」と聞くと、コナン・ドイルは「結婚させても、殺しても、君の好きにしたまえ」と答えたそうです。
　それで、ジレットはコナン・ドイルの脚本を書き直したのですが、なんとこのオリジナルとジレットが書き直した脚本の両方が火事で焼失してしまったのです。
　この後、ジレットが記憶を元に書き直した脚本「シャーロック・ホームズ」を携えコナン・ドイルの住むアンダーショーに来たのが1899年5月のことでした。
　この時のジレットの姿は「長い灰色のアルスター外套とディアストーカー」、シドニー・パジェット描くシャーロック・ホームズにそっくりなので迎えたコナン・ドイルも驚いたそうです。ジレットが持参した脚本にコナン・ドイルがOKをだしたので、1899年6月12日ロンドンでのお披露目公演が行われました。そしてアメリカの地方都市で試演興行を行った後に1899年11月6日にコナン・ドイルとジレット共同脚本「シャーロック・ホームズ」はニューヨークのガリック劇場での初日を迎えました。
　演出効果の素晴らしさ(注1）もあって公演回数は1900年6月16日までに256回を数え、そして10月8日からのアメリカ地方巡業、英国のリヴァプールでの試演興行を終えた舞台劇「シャーロック・ホームズ」は1901年9月9日に《四つの署名》事件にも登場する「ライシアム劇場」で幕を上げ1902年4月12日に幕をおろすまで216回の公演が催されたのです。
　偶然にも、ストランド・マガジンでは1901年8月号から《バスカヴィル家の犬》の連載が開始され、1901年12月号にはウィリアム・ジレットの特集記事Mr. William Gillette as Sherlock Holmesが掲載されました。　　　　　　　　　　　　　　

(注1）舞台劇「シャーロック・ホームズ」の内容は《ボヘミアの醜聞》《最後の事件》を元にしていて、他の事件のプロットも取り入れられています。人気のあった演出効果はホームズがランプを椅子で壊すと場内が真っ暗になったことでした。そのシーンの写真も下記に載せてあります。

ロンドン・マガジン掲載以外の写真はストランド・マガジン1901年12月号Mr. William Gillette as Sherlock Holmesに掲載されたもので、舞台写真はニューヨーク公演のものです。
　　　

The Harmsworth London Magazine
Vol.10　1903年掲載
　　　　　　　　　　　　　　　　ウィリアム・ジレット
ジレット演ずるホームズ








































「ランプを椅子で壊すシーン」この後、場内が真っ暗になる演出でした。

部分拡大写真↓

このランプ割りのシーンが下記の動画の
11分40秒あたりから見ることが出来ます。
ホームズはフランク・ランジェラ(1981年上演)
Frank Langella as Sherlock Holmes Act 4 part 2


(動画情報提供：木下信一氏）


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