炎の照らす明かりで壁が赤く染まる建物の窓。陰気な女性が火事の様子を眺めています。
そのうち消防馬車が到着。彼女は消防の職員と一緒に主の部屋の戸を叩きますが、返事がありません。 中には誰もおらず、主人のものではないステッキが残されていました。
そして火災現場---その家の材木置き場---から1体の焼死体が発見されたのでした・・・
場面は変わって次の日の朝、ホームズとワトスンが散歩から戻ってくると、玄関でハドスン夫人が、若い男性と問答しています。
「僕がジョン・マクファレンです。助けてください！」
まるでホームズが彼を知っているような口ぶりです。 ホームズは「僕に分かるのは君が喘息もちで若い独身の弁護士ということだけだ」と告げます。
朝刊を見るように、言われたのでワトスンは手にしていた新聞を読み上げます。 そこには、ノーウッドのオールデーカ邸の材木置き場で火災がおき、そこから行方不明になっていたオールデーカ氏の焼死体が発見された。氏の部屋には争った後と昨夜訪れた客の血の付いたステッキが残されていた。その客の名は青年弁護士マクファレン・・・
マクファレン青年の自宅はブラックヒースで昨夜はホテルに泊まっていました。 通勤途中でこのような事態に陥っており、おまけに駅から警察に尾行されていることに気づき、逮捕される前に自分は無罪であると、急いでホームズに助けを求めたのです。
そこへレストレイド警部が到着。マクファレンに更に状況は悪化しました。しかしホームズは連行をせかす警部を押しとどめ、マクファレンの話を聞くことにしました。オールデーカ氏について、マクファレンは両親の知り合いということだけでそれ以外については知りませんでした。
その彼が昨日の午後突然、事務所にやってきたのです。自分は手広く建設業をやっていて財産がある。その財産を君に全部譲りたいと・・・
おどろくマクファレンにオールデーカ氏は、彼の母親と昔つきあっていた、なので君を息子のように思っているから資産を託したいのだと続けて言います。そして、今夜書類を作りたいので、夜9時に家に来てくれと。
その晩マクファレンは道に迷い遅刻しましたが、なんとか屋敷に到着し、書類を作成。父の形見のステッキがどこかにいってしまうトラブルがあったものの---オールデーカ氏が探しておいてくれるといったので---
その晩は遅かったので近所に宿をとったのでした・・・
マクファレンの話が終わると、レストレイド警部はさっさと彼を連行していってしまいました。
ホームズの元にはオールデーカ氏の遺言の原稿が残されます。改めて下書きを読んでみると、奇妙なことに気がつきます。文字が揃ってないのです。ホームズは、この原稿が列車の中で書かれたと推理します。綺麗なところは駅で停車していたから、乱れているところは走行中・・・と。
しかし、重要な書類のはずなのに、なぜ列車の中で走り書きされたのか？
謎は更に深まります。
ホームズは最初に母親に会いに実家のあるブラックヒースへ行きました。彼女はオールデーカについて話してくれましたが、それは彼に対する悪態でした。母親はオールデーカと婚約したこともあったのですが、彼の異常な性格を見抜き分かれたのです。
オールデーカはそれを恨み、結婚式の日に、彼女の破り捨てられた写真と一生許さないと言う手紙を添えて送りつけたのでした。ワトスンは遺産を息子さんに譲ったのは許したからでは？といいますが、母親は「あの悪魔の遺産などいりません！」と言い放ちます。あまり収穫がないまま、ブラックヒースを後にします。
その足でノーウッドへ向かったのですが、出迎えたのは威張りくさったレストレイド警部。遺体のそばにボタンがあった！これこそ遺体がオールデーカであるといいます。次に書斎を案内してくれたのですが、ほとんどマクファーレンに不利な情報ばかりでした。
レストレイドの次は家政婦から話を聞きました。しかし無愛想な家政婦は、何か隠しているのかおかしな様子であまりしゃべりません。とりあえず、ワトスンは書斎に残り、ホームズは外へ出ました。焼け跡から何かを拾い上げ、そして庭の隅に円形に置かれた小石を見つけたホームズはそばにいた警官を呼びとめ、付近の状況についてたずねます。
ワトスンは、興味深い事を発見しました。金庫の書類の中に資産にかんする物が何もなかったのです。預金はコーネリアスという人物に全部振り込まれていました。これはいったいどういうことなのか？そしてホームズは、家政婦に不思議な質問をしました。浮浪者に施しはするのかと。すると彼女は、そんなことしません！と冷たく言い放ちました。
場面は変わり二人の浮浪者が焚き火をしています。
座っている浮浪者---ホームズの変装---が、立っている浮浪者に、元船乗りの浮浪者のことを尋ねました。すると彼は「ヤツは嘘つきだ！」と答えます。自分が前にいったら警察を呼ぶ！とけんもほろろに追い払われたのに、服や食べ物をもらったと言ったからです。
次の日の朝のベイカー街・・・
力ないヴァイオリンの音が聞こえます。ワトスンが言ってみると食事もせずに憔悴しきったホームズがナイトガウン姿で座り込んでいました。そしてワトスンにレストレイドからきた勝利宣言を渡します。
「新証拠を握った有罪は決定的 手を引くよう勧める L」
しかしワトスンはその手紙を置くと、落ち着いて朝食を食べてから、その証拠をとやらを見に行こうとホームズに勧めました。エネルギーを補給し、身支度をしてホームズとワトスンはノーウッドへ到着すると、ホームズに勝った！と踏ん反り返ったレストレイドが待ち構えていました。
その新証拠とやらを見せるために、二人を玄関へ誘います。掛かっているコートを掻き分けると、壁にマクファレンの血染めの指紋が現れました。指紋は同じ物がありません間違いなくマクファレンが犯人です！とレストレイドは自信満々です。しかし、ホームズはこれを確認するとニッコリと笑い、3階へ向かいました。そして各部屋をくまなく見て回ります。心配そうなワトスンにホームズは、こっそりと昨日はあんな指紋はなかったと教えてくれました。
次にホームズはレストレイド警部に、警官を3名、わら束2つ、水の入ったバケツを屋根裏部屋に用意してくれるように頼みます。ホームズはわら束に火をつけて、警官に「火事だ！」と叫ぶように言います。すると壁の一部がばったりと倒れ、中から男が慌てて出てきました。死んだはずのオールデーカです。
びっくりしたレストレイド警部にホームズは説明します。屋根裏の長さと外から計った屋敷の長さが違ったこと、これは隠し部屋があることを示している。そして、そんなことをした理由は、債権者から逃れるためと昔自分を振った女性に復讐するためと。オールデーカはこれは冗談であり、犯罪ではないと主張しますが、ホームズは火災現場から出てきた死体のことを追求します。
ホームズの調べによると、あの死体は年老いた元船乗りの浮浪者で、普段は施しなどしないオールデーカの家政婦に呼び寄せられ、身代わりとして殺されたのです。オールデーカは「復讐してやる！」と悪党のお決まりの台詞をはいて連行されていきました。マクファレン親子は再び安らかな日々を取り戻すことができたのでした・・・。
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