「踊る人形」　あらすじ

　　　　　グラナダ・テレビ版　第2話　「踊る人形」　あらすじ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　by　アマデウソ

　広々とした庭で一組の夫婦が花の手入れをしています。しかし幸せな笑みを浮かべていた妻は視界にあるものを認めると顔色を変え、そのまま屋敷へ駆け戻ってしまいました。驚いた夫は妻が恐怖に陥ってしまった場所を見てみると、ベンチの縁にチョークで「踊る人形」の落書きがあるだけでした。

　場面はベイカー街221bへ変わります。
　その居間でホームズは何やら顕微鏡を覗き込み、ワトスンは長椅子に座り新聞を読んでいます。するとホームズが突然「ワトスン、きみは南アフリカの株に投資する気はないんだね？」と言い出しました。ワトスンは南アフリカの株投資について考えてはいましたが、ホームズには何も言っていなかったのでびっくりしてしまいます。ワトスンの心のうちを言い当てたホームズは得意な面持ちで、何故分かったか理由を答える前にワトスンへ「ばかばかしく簡単だ」といわないことを約束させます。ワトスンはそれを承諾しますが、ホームズが推理の過程を明かした後うっかり「ばかばかしく簡単だ」と言ってしまいます。いつものホームズなら怒り出すところですが、軽く受け流すだけで終わってしまいました。
　ホームズの機嫌が良いのでワトスンは仕事が舞いこんできたのでは？と問いかけます。するとホームズは人の絵が描いてある紙をワトスンに渡しました。まもなくその絵を送ってきたダービシャーの旧家の当主エルトン・キュービット氏が訪ねてきました。最初ホームズは子供のいたずら書きと断言しましたが、キュービット氏はこれが現れてから妻の様子がおかしくなったことを告白します。そして妻であるエルシーとの不思議な出会いを話し始めました。

　今から3年前のヴィクトリア女王即位50周年記念祭で、ロンドンに出てきたキュービット氏は、泊まったホテルで一人の若いアメリカ人女性エルシー・パトリックとめぐりあい恋に落ちました。そして彼女に夢中になってしまったキュービット氏は、1ヵ月後領地に戻る前に彼女と結婚してしまいます。しかし登記所へ結婚届を出す寸前エルシーは、キュービット氏に絶対に自分の過去を聞かないでほしい、それが出来ないなら別れると言い出しました。その時キュービット氏は何も疑問に思わず承諾しました。
　それから3年間二人はダービシャーの屋敷で静かに幸せに暮らしていました。ところが今から数ヶ月前の5月にエルシーの元にアメリカのシカゴから1通の手紙が届きます。おかしなことに彼女はその手紙を封も切らずそのまま暖炉にくべてしまいました。それ以来彼女は何かにおびえているようでしたが、庭のベンチに「踊る人形」の落書きが現れるようになってから、その様子がひどくなってしまったのです。警察に届けることも出来ず、過去のことを問うのでエルシーに聞くことも出来ず、キュービット氏はホームズに救いを求めてきたのでした。
　キュービット氏が帰るとさっそくホームズは居間の黒板に「踊る人形」を書いていきます。ホームズはこれを何かの暗号と推測しますが、一定の法則を見つけるにはもっと例文が必要と判断し、しばらくそのままにして置くことにしました。

　再びキュービット氏の屋敷に舞台はもどってきます。彼が帰宅すると今度は玄関のドアに「踊る人形」が書かれていました。キュービット氏はそれをメモし、召使に直ぐに消すように命じ、ホームズに手紙をだしました。その夜、エルシーは夜着にコートを掛けてどこかへ行っていたようでした。妻の不可解な行動に苛立ちを隠せないキュービット氏でしたが、エルシーは明日になれば解決するというだけでした。
　しかし二人の様子を窓の外から何者かが覗いていたのです。それに気づいたキュービット氏は拳銃を手にエルシーの静止を振り切って外へ出ますが、すでに曲者は消えた後でした。そしてドアにはまた「踊る人形」が書かれていました。その新しい手がかりを手にキュービット氏は再びベイカー街を訪れました。ホームズは暗号を受け取ると2日以内にそちらに向うとキュービット氏に約束しました。
　しばらくしてホームズはアメリカへ電報を打ちました。ワトスンが電信文をのぞくと「エイブ・スレイニー」と書かれています。ホームズに何かと問うと、彼はそれには答えず暗号で"E"と"旗印"が単語の区切りであることを発見したと告げました。
　そしてその晩ついに悲劇が起きました。真夜中にキュービット氏が目覚めると隣にいるはずのエルシーの姿が見当たりません。彼は護身用の拳銃を携え１階へいきました。すると居間から男女の争う声が聞こえてきます。キュービット氏が居間に飛び込むのと同時に屋敷内に銃声が響きました…。

　次の早朝ホームズの元にキュービット氏が最後に送った暗号が届きました。ホームズは黒板に暗号を書き写し解読しました。そしてそこに恐ろしい警告が浮かび上がってきたのです。
「エルシー　神の御許へ行く準備をせよ」
　そしてシカゴ警察からホームズの電報の返事が届きました。
「エイブ・スレイニーはシカゴの危険人物である」

　ホームズとワトスンは急遽キュービット邸へ向いました。しかし二人が駅に到着すると馬車の御者がキュービット邸の事件を教えてくれました。キュービット氏は心臓に銃弾を受けて死亡。夫人は頭に銃を向け自殺を図りましたが失敗して重体。すべてが終わった後でした。
警察は夫人がキュービット氏を殺害し、そのあと自殺を試みたと考えていました。
　しかしホームズはまず目撃者である召使たちの話を聞いたあと、惨劇のあった居間のテーブルの上の夫人のハンドバックを調べました。そのあとさらに調査を進めると3発目の弾丸を窓枠に、薬莢が窓の下にあるのを発見しました。キュービット氏の拳銃からは銃弾が2発発射されていたので、ほかに誰かがいた証拠でした。
　1発目はキュービット氏が引き金を引き窓枠に着弾、ほぼ同時に侵入者が撃った2発目は不幸なキュービット氏の命を奪い、3発目は絶望した夫人が自らの命を絶とうと撃ったものだったのです。
　ホームズはなにやら心当たりがあるらしく、召使にこの屋敷から数マイル先に宿泊できる農家があるか確認をし、そしてそこに滞在しているスレイニーという人物に手紙を送りました。そして出迎えのメイドにはもう直ぐ来るはずであろう客には事件のことを知らせないように指示しました。

　やがてスレイニーが夫人に会いにやってきました。そして居間に入るいなや、ホームズは彼に拳銃を突きつけました。そして夫人が重体であることを伝えました。暗号で手紙をもらったスレイニーは最初は信じませんでしたが、しかしホームズが事実を伝え、彼の証言が夫人の嫌疑をはらすと教えると素直に過去の話を始めました。
ﾊ
エルシーの父はシカゴの犯罪者の有力者でスレイニーは彼女の婚約者でした。しかし彼女は彼らを嫌い英国へ逃げ、キュービッド氏と結婚してしまいました。諦めきれないスレイニーはエルシーを追いかけてきたのです
　そして昨夜エルシーはスレイニーにお金を渡し、身を引いてくれるよう直談判したのでした。しかしスレイニーは怒りエルシーともみ合っているときに運悪くキュービット氏がやってきて互いに撃ち合いになってしまったのです。

　判決の結果スレイニーは死刑を宣告されますが、キュービット氏が先に撃ったことが証明され重労働の刑に減刑されました。エルシーは奇跡的に回復しひとり静かに領地にとどまったのでした。