美しき自転車乗り　あらすじ

　　　　　グラナダ・テレビ版　第4話　「美しき自転車乗り」　あらすじ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　by　アマデウソ

　土曜の昼下がり、ベーカー街に一人の女性が自転車で訪れました。

　そのころ居間ではホームズがワトスンに実験を披露していました。しかし先程の彼女によって実験は中断されてしまいます。不機嫌なホームズでしたが、彼女の外見をみるだけで、いつも自転車にのっていること、職業は音楽関係と推理しました。

　依頼人の女性――バイオレット･スミスは自分の身の上に起きた不可解な出来事をホームズ達に話します。

　彼女の父親は国立劇場の指揮者でしたが既に他界しており、親戚はアフリカで行方不明になってしまった伯父のラルフ一人でした。そんなある日新聞で自分達母子を探しているという広告を見つけます。父を亡くして以来、経済的に困っていたので遺産がどこからか入ったのでは？　という淡い期待を抱き、指定された弁護士事務所を訪れました。
　ところがそこで待っていたのは、落ち着いた中年の紳士・カラザース氏と身なりはよいのですが赤毛で物腰が下品な若者・ウッドレー氏だったのです。彼らは伯父ラルフの友人であると名乗りました。そして、伯父は無一文で亡くなってしまったが、彼女の後見を任せられたというのです。そこでカラザース氏は彼女に自分の娘の家庭教師になってくれるように頼んできました。しかし彼の屋敷はサリー州にあり、母親を一人ぼっちにすることができないスミス嬢は断ります。が、カラザース氏は親切にも週末はロンドンに帰ってもよく、給料も100ポンド出すといってきました。それならばとスミス嬢はこの仕事を請け負うことにします。

　それからは彼女は週末になると自転車と汽車を使ってロンドンの母親の元へ帰り、月曜の朝に屋敷に戻るという生活を送ることになりました。しばらくは平穏な毎日を送っていましたが、例の赤毛のウッドレー氏が屋敷にやってきてから事情は変わってしまいます。彼は二人っきりになったのを見計らって、乱暴に彼女を抱きすくめ求婚を迫ってきたのです。間一髪のところでカラザース氏が助けてくれ、ウッドレー氏は屋敷を出入り禁止となりました。ところが今度は表立って態度に出さないものの、カラザース氏が彼女に関心がある素振りを見せるようになったのです。しかし彼女には既に婚約者がおり、彼の希望を叶えることはできないのでした。

　さて、ここまででしたらどこでも起こりそうな事柄だったのですが、2週間前からスミス嬢が221bに相談に来なければならない出来事が始まったのです。屋敷から駅まで自転車で行く途中、中年の黒い髭を生やした気味の悪い男が後ろから付いてくるようになったのです。
　1度勇気を出して急な曲がり角で待ち伏せをしたのですが、不思議なことに男はどこかへ消えてしまっていました。彼女の興味深い話を聞いたホームズは、何か進展があれば連絡をし、決して無茶な行動はしないように注意をします。

　翌週の月曜日、ホームズは多忙だったのでワトスンがかわりにスミス嬢の身辺調査へ向いました。ワトスンは彼女が通る道が見える所に陣取り観察をすることにします。やがて彼女の言うとおり自転車で走る彼女の後ろから髭の黒い服の男が追いかけていくのが見えました。その謎の男はある程度までスミス嬢の後をつけると、森の中に消えてしまいます。ワトスンが消えていった場所へ行ってみるとジャービスという看板ありました。ワトスンは221bに戻りホームズに今日一日のことを報告します。ところがホームズは褒めるどころか、ワトスンの行動は彼女が言ったことが事実であることを確かめただけで、新しい事実を掴んでないと貶しました。そして近所の酒場に行けば周辺の情報はわかると言います。汚名挽回のため逸るワトスンをホームズは土曜まで待つんだ、と押しとどめました。

　数日後スミス嬢からカラザース氏から求婚あり、しかし既に婚約者がいるので断ったと電報が届きます。そこで今度はホームズが調査に向いました。まっすぐ酒場に向ったホームズは主人から、さっそく情報を聞き出します。あの男が消えた森の先にある屋敷はチャリントン館といい、ウィリアム氏が主人である。同氏は元牧師のあまり紳士的ではない人物で、週末には館はガラの悪い連中のたまり場になっているとのこと。そして一番タチの悪いのが赤毛の口ひげの男だと言った時、その本人が酒場へやってきました。ホームズに因縁をつけた赤毛の男―――ウッドレー氏は喧嘩を吹っかけてきましたが、ホームズは得意のボクシングでノックアウトします。

　その次の日、スミス嬢はウッドレー氏がカラザース氏に会うのを見つけてしまいました。恐くなった彼女はホームズに今週の土曜日に退職すると手紙を出します。ちょうどカラザース氏が彼女の為に注文していた馬車が届いたので、一人自転車で駅に向うことはなくなりましたが、ホームズは心配になり遠くから彼女を見守ることにしました。ところが今日に限って彼女はいつもの時間よりも早めに屋敷を出たのです。ホームズとワトスンが見たのは、誰も乗っていない空っぽの馬車でした。馬車に乗り込み消えたスミス嬢を捜していると、例の黒髭の男と出会います。そこで突然森の中から女性の悲鳴が聞こえました。

　3人はあわててその声の方へ駆け寄ると、東屋でウッドレー氏が嫌がるスミス嬢と結婚式を挙げている所でした。それを見て怒り狂った黒髭の男―――カラザース氏はホームズとワトスンの脇をすり抜け、拳銃の銃口をウッドレー氏に向けます。
　そして彼は「もう遅い、彼女は俺の妻だ！」と勝ち誇るように言うウッドレー氏に
「いや、未亡人だ！」と言い放つと、同時に拳銃の引き金を引きました。幸いなことに急所は外れました。

　ホームズとワトスンは一先ず気を失いかけたスミス嬢と怪我をしたウッドレー氏を屋敷まで運びます。結婚式を執り行った牧師ことウィリアム氏は、二人の結婚は正当だと言い張りましたが、ホームズは彼の牧師の許可書が無効になっていることを指摘し、結婚は無効だとつげました。二人の手当てが終わり終に真実が語られるときがきました。

　カラザース氏は重い口を開きます。
　実はスミス嬢の伯父ラルフは南アフリカで財を成していました。財産を横取りしようと考えたカラザースとウッドレー氏は、ラルフ氏が亡くなる前に英国へ渡り財産を相続するであろうスミス嬢と結婚しようとたくらみました。どちらが求婚するかは、帰路の船上の賭けトランプで決めたのです。

　ところが誤算が生じました。カラザース氏もスミス嬢を愛してしまったのです。ウッドレー氏が彼女に何をするか分かっていた彼でしたが、彼女にすべてを告げれば彼女は自分の元から去ってしまう･･･結婚できなくても一緒にいたかった彼は変装をして屋敷から駅へ向う彼女を護衛していたのでした。

　後日、裁判が開かれウッドレーは10年の刑、ウィリアムスンは7年の刑そしてカラザースはホームズの弁護もあり6ヶ月の刑ですんだのでした。