グラナダ・テレビ版　第6話　「まだらの紐」　あらすじ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　by　アマデウソ 　釘と蹄鉄を盗んだジプシーの子供が鍛冶屋に追われています。ところが一人の髭をはやした厳しい男が、鍛冶屋の前に立ちはだかりました。鍛冶屋は追いかけている理由を話しますが、その男は聞く耳を持たず、挙句に鍛冶屋を川へ突き落としてしまいました。彼の名はグリムスビー･ロイロット博士。亡妻の連れ子であるヘレン・ストーナー嬢と朽ちかけた屋敷に二人暮らし。しかし彼女は1ヶ月前に婚約をし、もうすぐ結婚の予定です。 　その日の夜、ストーナー嬢が就寝しようと自室に向うと、ベッドの上には建築資材が散らばっていて眠ることができなくなっていました。あわてて居間の博士の元へ行き、このことを告げましたが彼はどこ吹く風といった感じで、一方的に屋敷の修理をしている、しばらくは亡くなった姉の部屋へ行けというのです。仕方なしに、彼女は姉のベッドで休みますが、真夜中どこからともなく笛の音が聞こえて目が覚めました。マッチの明かりで辺りを確認しましたが良く分かりません。ストーナー嬢は正体不明の恐ろしさに身を震わせるのでした･･･。 　翌朝、221bの3階にあるワトスンの寝室。 　ワトスンはベッドの上でまどろんでいましたが、突然ホームズにたたき起こされてしまいました。早朝にも関わらず、依頼人が来たというのです。ワトスンが急いで着替えて2階の居間へ降りると、一人の女性が暖炉の側に座っていました。早速、ホームズは彼女が汽車でやってきたこと、自宅から駅まで2輪馬車に乗ってきたことなど推理します。 　彼女---ヘレン・ストーナーは、ホームズの神業に驚きつつ、その推理が正しいことに同意します。そして身の上話を始めました。 　継父ロイロット博士は、イングランドで最も古いサクソン系の家柄の、ストーク・モランのロイロット一族の最後の一人。かつてロイロット家は広大な領土を持っていましたが、前世紀に放蕩者で浪費家の当主が続いてしまったため、現在では財産といえば、僅か数エーカーの土地と幾つもの抵当がついた屋敷のみになってしまっていました。若き日のロイロット博士は、向上心あふれる人物で、親戚からお金を借りて医学部へ進学し、卒業後インドで開業して成功を収めます。その後、ヘレンが2歳、姉のジュリアは7歳のときに、彼女達の母親と結婚しました。そしてロイロット博士は彼女達を連れて英国へ帰ってきます。博士はロンドンで開業しようと思っていましたが、彼女達の母親が鉄道事故で亡くなったため、開業を諦めて故郷の屋敷へ戻りました。 　当初、故郷の村の人々は屋敷の当主が戻ってきたことを喜んでくれたのですが、博士は親交を暖めるどころか屋敷に引きこもり。たまに外へ出れば村人と喧嘩する毎日。屋敷に来るのは博士が親交を結んでいるジプシーたちくらいでした。使用人も博士とそりが合わず直ぐにやめてしまうため、家事は姉妹で行っていたのです。やがて二人も年頃になり、姉のジュリアは海軍少佐と婚約しました。ところが式の2週間前彼女は非業の死を遂げるのです。亡くなる日の前日の夜、ストーナー嬢の寝室へジュリアがやってきました。そして真夜中に口笛が聞こえないか彼女に尋ねます。ここ数日真夜中の3時ごろになると決まって聞こえるというのです。ストーナー嬢は聞いた事がないので、ジプシーのものではないかと言いました。その答えで安心したのかジュリアは自分の寝室へ戻ります。しかし深夜、突然女性の叫び声が聞こえたのです。ストーナー嬢はあわてて姉の寝室へ行くと、恐怖に硬直したジュリアがよろめきながら出てきました。そして崩れ落ちるように倒れると「ヘレン...紐よ...まだらの紐よ...」と謎の言葉を言い残し苦しみながら亡くなってしまったのでした。外傷はなく毒殺かと思われましたが、検死の結果、死因は不明。その死は謎のまま時は過ぎました。それから2年後、彼女に幸運が舞い込みます。パーシー・アーミティジという青年から結婚の申込を受けたのです。博士は特に結婚には反対しませんでした。ところが昨日突然屋敷の改修工事が始まり、無理やり姉の寝室へ移動させられたストーナー嬢の耳に、亡くなった姉が聞いた口笛が聞こえたのです。恐ろしくなった彼女は一睡もできず夜が明けると、以前ホームズの依頼者だったファリントッシュ夫人の助言を思い出し、ベイカー街へやってきたというわけでした。ホームズは彼女の依頼を快く受け、屋敷へ調査に向うと約束します。それを聞くとストーナー嬢は安心してベイカー街を後にしました。 　するとその直後、継娘を追いかけて博士がやって来たのです。家のことに干渉するなと警告すると、火掻き棒を取りあげて「わしに近づくとこうなるぞ！」と曲げて脅しました。もちろんこんなことに動じるホームズではなく、火掻き棒を元に戻し勝負を受けることにしたのです。まず屋敷におもむく前に、ホームズはロイロット博士の財産について調べるために登記所へ、ワトスンはカルカッタ時代のことを聞きに同所にいた友人に話を聞きにいきました。そして落ち合った列車の中で確認できたことは、ロイロット博士はかつてカルカッタで開業医として成功していたが、屋敷内でおきた盗難に腹を立て、現地の召使を殺害してしまったため監獄送りとなってしまい、そのお陰で、性格が変わってしまったということ。そして、彼の妻の遺産はかつて年利1.000ポンドでしたが、農産物の価格の下落により750ポンドに落ち込み、さらに遺言により娘達が結婚する場合は250ポンドづつ分割されることになっていること。つまり、娘が結婚してしまえば、何もかも失ってしまった博士に待っているのは貧乏暮らし。博士が何故娘を亡きものにしようとする動機が見えてきました。 　二人は列車を降りたあと馬車で屋敷に向かい、ストーナー嬢と落ち合いました。屋敷は半分朽ち果てていて、人が住めるのは1階部分のみ。ストーナー嬢の姉の寝室は、ロイロット博士の寝室の隣にありました。中を調べてみると奇妙な点がいくつか見つかります。ベッドの側にある鳴らない呼び鈴の紐、外ではなく博士の部屋へ開いている通気口、そして動かないように床に固定されたベッド...。次にロイロット博士の部屋を調べました。そして、ここにも不可解な謎が。犬も猫もいないはずなのに、金庫の上にミルクの入った皿とその側に犬用の皮ひも...。 　ホームズはこれらを見て確信したのか、これを守らなければ命の保証はしないと注意をして、ストーナー嬢に指示を出しました。その晩、彼女はホームズに言われた通りに早めに寝室へ下がったあと、狩猟小屋に隠れているホームズとワトスンにランプで合図を送りました。そしてホームズは彼女に一晩、自分の寝室で寝るように言い、ワトスンと二人暗闇の中、じっとその時を待ちます。そして真夜中。やがてその時が来ました。かすかな気配に気づいたホームズが蝋燭の火をともしそれを見つけ棒で追い払ったのです。その直後、隣の部屋から叫び声が聞こえました。 　二人が隣の部屋へ行くと首に蛇が巻きつき、絶命しているロイロット博士がいました。ホームズは「暴力は必ず暴力の報いをうけ、人を陥れようと穴を掘る者は、自らその穴へ落ちるのだ。」とつぶやきました。翌朝、怯えきったストーナー嬢を叔母のところへ送り届けるために乗った列車の中で、ホームズはロイロット博士の陰謀を説明しました。蛇の毒は即効性があり検査でも検出されないことを知っていた博士は、ミルクを使い口笛で戻るように仕込んだこと。そして椅子に乗り通気口から蛇を隣の隣室に送りこみ、姉と同じく彼女の殺害をたくらんだ---しかしホームズが蛇を棒で脅かしたため、興奮した蛇は通気口を逆戻りして待っていた博士に襲いかかったと･･･ 　ワトスンから間接的に博士を殺したんじゃないのかい？と聞かれたホームズでしたが「その点での良心の呵責は感じてないよ」と締めくくりました。