「ぶなの木屋敷の怪」　あらすじ

　　　　　グラナダ・テレビ版　第8話　「ぶなの木屋敷の怪」　あらすじ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　by　アマデウソ

　真夜中のある大きな屋敷。

　一人の男が塀を越え屋敷内に浸入しました。しかし犬に追われあえなく退散。屋敷の主人と妻は犬の吼える声に気づきましたが、その侵入者が誰であるかわかっているのか、外を見ようともしませんでした･･･

　夜が明けて場所は221bの居間。朝食の席についたワトスンに、ご機嫌斜めのホームズは議論を吹っかけてきます。議論といってもワトスンの書いた物語にケチをつけ八つ当たりしているだけ。不機嫌の原因はロクな仕事の依頼が来ないから･･･
　ホームズはこれが止めの一発だよ。とワトスンに一通の電報を渡しました。

「親愛なるホームズ氏。家庭教師の申し出に応じるか否か御相談したく、明朝10時半にお伺いいたします。」

　依頼人の名前はバイオレット・ハンター。

　彼女がやってきた早々、ホームズはこういうのは自分の管轄じゃないと、電報をテーブルに投げつけますが、ハンター嬢も負けてはおらず、「とても奇妙な体験をしましたの。私には相談できる親や身よりもいませんので」と食い下がります。奇妙と聞いてホームズはとりあえず話を聞くことにしました。

　現在彼女は失業中。ウェストエンドにある家庭教師斡旋所へ仕事を探しに通ってます。そこでおかしな雇い主と出会ったのです。
彼女が斡旋所のオフィスに入ってくるなり、その人物は「この人だ！」といって駆け寄ってきました。ぐるりを彼女の容姿を観察し、彼女が述べる履歴・職歴も上の空。仕事の条件はレディとして素養を備えているかそれだけだ、というばかり。
　そして前の職場では月4ポンドもらっていたというと、いきなり家庭教師としては法外な報酬である年100ポンドを呈示し、しかも幾らか前払いもしてくれるというのです。ただ、勤める先はロンドンから離れており、ウィンスターから8キロ離れた「ぶなの木屋敷」。　　仕事はスリッパでゴキブリを殺すのが好きという、6歳の腕白な少年の世話というものでした。しかしこれで100ポンドというのは、おかしいので彼女は他に何か仕事があるのでは？とたずねます。
　すると男は「家内の命令には何でもしたがって欲しい。女性には簡単な仕事ですよ」そして続けて「家内は服の好みにうるさいので、これを着てくれといえば着て欲しい、あちらへ座って欲しいといえば座って欲しい」そして最後に･･･
「来る前にその髪の毛を切って欲しいと･･･」
　髪の毛が自慢の彼女は即座に断りました。

　でも、今は失業中の身。髪の毛を切れば年100ポンドの仕事が手に入る･･･と翌日から断ってしまったことを後悔しはじめました。そして悩んでいる所へ、そのおかしな雇い主ルーキャッスル氏からもう一度考え直してみてくれないか？という手紙が届いたのです。お金のこともあり、彼女は仕事を引き受ける決心をしました。でもその前にホームズに相談をしたかったのです。

　とりあえずホームズは不審な点や危険が迫ったら電報をくれるように助言をし、彼女も安心して帰っていきました。でも、彼女が帰ったあとワトスンに言いました。
「僕の妹ならいかせない」

　場面は変わって「ぶな屋敷」へ到着したバイオレット嬢。最初に出迎えたのは不気味な使用人トラー。握手のかわりに小鳥の死骸をみせるルーキャッスル氏の息子エドワード。無愛想なトラー夫人･･･
　部屋へ荷物を置くとルーキャッスル氏は屋敷を案内してくれました。しかし何故か庭には凶暴な犬がおり夜は放しているとのこと。なので何があっても夜は屋敷からは出ないようにと忠告を受けました。次に居間に連れて行かれます。そして午前中は青い服を着てくれと頼まれました。

　その晩、与えられた部屋でバイオレット嬢は持ってきた衣服をタンスにしまってました。すると鍵のかかった引き出しが一つあります。鏡台から鍵を探し出し、開けてみると中には髪の毛の束が入っていました。あわてて、トランクから取っておいた自分の髪の毛と比べると良く似た色合い･･･
　一体この髪の毛はなんなのか？

　数日の間に様々な出来事が起こり、彼女はホームズ達に電報を打ちました。ホームズ達とバイオレット嬢は宿屋で落ち合います。
そして彼女はこれまでの経緯を話し始めました。
　最初の2日は無事に過ぎました。しかし3日目、朝食のあと青いドレスを着るように言われます。そして窓際に座らされ、1時間ほどそこに座っているようにいわれました。ルーキャッスル氏は彼女に気を使い、退屈しないように笑い話をしてくれました。そして2日後また同じことを。
　窓際に座らされるということは外に何かがあるに違いないと思った彼女は、ハンカチに鏡を忍ばせて窓の後を伺いました。すると門のところに男が一人･･･。もっと良く見ようと思いましたが、奥方がそれを見抜きました。そして彼女が窓の外を見ないようにブラインドを下ろしてしまいました。

　これが1週間前の出来事。これ以後は青い服を着せられることはありませんでした。しかし、昨日、ホームズ達に助けを求めなければならない事態が発生したのです。
　ぶなの木屋敷には塔が一つありました。そこへ入るにはトラー夫妻の住んでいる所を通らねばならず、必ず鍵が掛かっていました。しかし丁度トラーが鍵を掛け忘れているところを目撃。好奇心に駆られて塔の中に入っていきました。そして外から見るといつも鎧戸の下りている部屋を目指して塔を登っていきます。しかし部屋には鍵が掛かって入れませんでしたが、ドアの下の隙間から人の影が見えたのです。
びっくりしたバイオレット嬢は慌てて、階下へ逃げましたが、そこで出会ったのはルーキャッスル氏。そして二度と塔に入ってはならない。入ったら犬に食わすぞと恐ろしい脅しを受けたのです。
　あの塔には誰かがいる！
　でもどうして良いのか分からないので、ホームズ達に助けを呼んだのです。ホームズは一計を案じ、4時半に屋敷へ向う、その前にやって欲しいことがあると彼女に告げました。

　夕方、ルーキャッスル夫妻がどこかへ出かけました。バイオレット嬢は坊ちゃんが地下室に入り込んだとトラー夫人を騙し、彼女を地下室へ閉じ込めました。ホームズ達は門から屋敷へ入りました。
　同じ頃、一人の男が塔の部屋侵入。例の部屋のいた女性が悲鳴をあげました。それを聞いたホームズとワトスンは何事かと、塔へ向います。しかし丁度そのとき出かけたはずのルーキャッスル夫妻が戻ってきました。
　ルーキャッスル氏も塔へ向います。しかし塔の部屋はものけのから。「娘をどこへやった！」と怒り狂うルーキャッスル氏は、3人を閉じ込め犬を放ちに外へ飛び出しました。ところが腹をすかした犬はホームズらを襲う前にルーキャッスル氏に襲い掛かったのです。彼は瀕死の重症を負い、屋敷に運び込まれました。その応急処置をしているところへトラー夫人がやってきます。そして「計画を話してくだされば、むだ骨させなかったのに！」とバイオレット嬢たちにいいました。
　彼女はそのあと屋敷の秘密を話しはじめました。塔に閉じ込められていたのは、ルーキャッスル氏と先妻との間の娘アリス嬢でした。彼女には母親から相続した財産がありました。おとなしい彼女は父親の再婚後、邪険に扱われていましたが、財産は父親の好きなようにさせていました。ところが彼女に婚約者であり、彼女を塔から救い出した男性であるファウラー氏が、現れてから状況が変わります。アリス嬢が結婚すれば財産は夫であるファウラー氏のものになってしまうのです。それを恐れたルーキャッスル氏は、娘に財産を譲るように脅迫をしました。アリス嬢は拒絶しますが精神的に衰弱してしまい病気になってしまいます。長患いになった彼女の髪は短く切られ、ベッドから起き上がれるようになるとファウラー氏に会えないように塔の部屋に押し込められてしまったのです。バイオレット嬢は度々アリス嬢を訪ねてくるファウラー氏を追い払うために雇われたのでした。
　しかしアリス嬢を愛するファウラー氏は、トラー夫妻に金を与えて味方につけ、ホームズたちが塔に突入するその直前、アリス嬢を救出したというわけでした。その後、ルーキャッスル氏は妻の必死の看病の結果、命は助かりましたが廃人同様となり余生をおくりました。
　ファウラー氏とアリス嬢は逃げたあと結婚し、モーリシャス諸島へ官史として赴任。バイオレット嬢は私立学校の校長として成功を収めたということでした...