「ギリシア語通訳」　あらすじ

　　　　　グラナダ・テレビ版　第9話　「ギリシア語通訳」　あらすじ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　by　アマデウソ

　英国の港町。

　一人のギリシャ人男性が降り立ちました。そこへラティマーと言う男が彼を迎えにきます。彼は何の疑いもなくついていったのですが、馬車に乗り込む寸前、頭を殴られ気絶。そのまま馬車に押し込まれどこかへ運ばれていきました･･･

　場面は変わってベイカー街221b。

　居間で書類の整理？をしているホームズがワトスンに、突然家族の話をしはじめました。なんと彼に兄がいるというのです。しかも観察力や推理力は彼をしのぐはるかに優れた人物とのこと。兄のマイクロフトは役所に勤めていて、ロンドンで一番風変わりなクラブ――ディオゲネス･クラブ――入会条件は内気で人間嫌い――に所属しているとのことでした。

　そしてホームズはその兄から事件の依頼を受けたので、いっしょに会いにいかないか？とワトスンを誘います。こんな男がこの世にもう一人いるのか！と興味津々のワトスンは迷わずついていきました。クラブに入ると大勢の会員が誰ともしゃべらず、それぞれ新聞を読んでるなどくつろいでいます。このクラブで会話が出来るのは唯一談話室のみなのです。

　談話室に通されると窓際に大柄な男･･･マイクロフトが陣取っていました。そしてホームズに手招きをすると、窓からみえる二人の男の素性を推理しはじめます。ワトスンが感心して二人の話を聞いていると、一人の男性が部屋にやってきました。彼はマイクロフトの友人でギリシャ人のメラス氏。この英国でギリシャ語の通訳をして生計を立てています。実は二日前の月曜日に異様な仕事を引き受けたのです。

　その日の晩、急な仕事が舞い込んできました。男が用意した馬車に乗り込んだのですが、窓にはカーテンが下ろされ外が見えないようになっていました。行き先を知られたくないと言うのです。メラス氏にとって不本意でしたが、相手の男は手に短い棍棒を握り、なにやら物騒な様子。だまってついていくことにしました。

　２時間ほどたった９時１０分前、とある気味の悪い屋敷に到着しました。奥からめがねをかけた小男がでてきて奇妙な部屋へ案内されます。するとそこへ顔を包帯と絆創膏で隠され、両腕を縛り上げられた男が連れて来られました。どうみても監禁されています。尋常ならざる状況の中、めがねの男はメラス氏に、包帯の男に書類にサインをする気があるかどうかたずねるように命令しました。男の口は包帯でふさがれているため、会話はすべて石版による筆読によりおこなわれます。

　包帯の男は書類に署名することを断固拒否していました。そのうちメラス氏に名案が浮かびます。男達はどうやらギリシャ語を全く解さない様子。ならば会話の最後に質問を付け加え包帯の男の素性を探ろうと思い立ったのです。

　するとこのようなことが分かりました。
"彼はロンドンに来るのは初めて。もう３週間も監禁されており、食事も満足にとっていない。名前はクラティディスでアテネの出身"･･･

　あともう少しで全部聞き出せそうだったそのとき、部屋に一人の女性が入ってきました。彼女は包帯の男をみると「ポール！」と駆け寄ってきました。そして男も「ソフィー」を彼女の名前を呼び抱きしめます。しかし例の男達によって頭を殴られ引き離されてしまいました。通訳もそこで中止。メラス氏は堅く口止めの上――誰かに漏らしたら命はないと――馬車に乗せられウォンズワース公有地で放りだされました。何とか助かりましたが、あの哀れな男が忘れられず、何とか助けたいという一身で、マイクロフトに相談をしたのです。

　マイクロフトが最初にしたことは、新聞にギリシャ人とその女性の尋ね人の広告を出したことでした。しかし未だ反応はありませんでした。マイクロフトは事件をシャーロックに渡します。シャーロックはメラス氏に悪党は新聞広告のことを知っているかもしれないので、行動には注意するように忠告して彼を帰しました。

　221bに戻りながらホームズとワトスンは、メラス氏が出合った人々の関係を推理しました。娘は英国に遊びに来ていたが、悪党に口説かれてしまった。ギリシャ人の兄は交際を阻止すべく英国へやってきたが、監禁され、娘の財産を譲る書類にサインさせられそうになっている――と

　さて部屋に戻るとドアの下から人影がよぎるのが見えました･･･誰かと思いきや、マイクロフトでした。新聞広告に名乗り出た人から手紙が来たので、先回りしていたのです。早速手紙の主に会いに行こうというマイクロフトでしたが、シャーロックがさえぎります。今は娘よりその兄のほうが重要だと。

　娘の居場所が判明したので、早速現場に向います。途中でメラス氏を拾うと彼の部屋へ行きましたがものけのから。大家のおばさんによると男二人が、メラス氏を迎えに来たと言うのです。一足おそく彼は悪党にさらわれてしまったのです。

　一刻も早く彼らを逮捕するために、警察に逮捕状を出してもらいます。

　その頃メラス氏は通訳をまたやらされていました。妹の命を盾にされ囚われてのギリシャ人は、ついに財産の書類にサインをしてしまいました。そしてその直後、悪党は彼らを部屋から引きずり出します。

　やっと捜査状が出て、屋敷へ向ったホームズ達でしたが、一足遅く彼らは去った後でした。しかし２階で倒れているメラス氏とギリシャ人を発見しました。しかし時既に遅くギリシャ人のほうは亡くなっていました。

　屋敷内を捜すと時刻表が見つかりました。彼らは英国を脱出しようとしているのです。彼らを追いかけるために、ホームズ達は急いで彼らが乗ったであろう列車に飛び乗りました。検札をしている車掌に男二人、女一人のグループを教えてもらいます。すると二組いることが分かりました。居眠りをしているマイクロフトを置いて二人は、彼らがいるコンパートメントへ行くと女性･ソフィーと若い男ラティマーがいました。しかし首謀者と思われる眼鏡の男――ケンプはいません。

　何も知らない彼は食堂車で優雅に夕食をとっていたのです。

　一方コンパートメントでは尋問が続いていました。ホームズはこの男と結婚すると言うソフィーに、この男が兄ポールを殺害したことを告げます。男は否定し、しかし言い逃れが出来ないとわかると、ソフィーを盾に列車の外へ逃げ出そうとしました。しかし開いたドアにぶる下がったまでは良かったのですが、運悪く対向列車に巻き込まれ命を落とします。

　その頃食堂車ではいつの間にか目が覚めたのか、マイクロフトが悪党の片割れケンプと相席をしておしゃべりに興じていました。食事が終わると、ケンプはホームズ達のことも相棒の死も知らないまま、コンパートメントへ戻ります。即座に室内の状況を判断した彼は内ポケットの護身用の銃を取り出そうとしましたがありません。慌てふためく彼に先程身体がぶつかった時に、いつの間にか、すりとった拳銃を押し付けるマイクロフトが登場。次の駅でケンプとソフィーは逮捕され、事件は解決したのでした･･･