シャーロッキアンの果てしなき冒険　 by 水野 雅士 第７章　鉄道で駆けつける地方の事件 ２.　地方への主な始発駅とそれに関連する事件 9）ウォータールー駅　　(駅の位置） 　ウォータールー橋の南側にあり、イングランド西南部への起点となっていて、この駅もホームズ物語には頻繁に出てきます。ホームズとワトスンはウォータールー駅から出発して《まだらの紐》《海軍条約文書事件》ではそれぞれサリー州のレザヘッドとウォウキングへ、《ぶな屋敷》《トール橋》ではいずれもハンプシャー州のウィンチェスターへ、《曲がった男》では同じくハンプシャー州のオールダショットへ向かっています。また《白銀号事件》でホームズとワトスンは，パディントン駅からダートムアへ出発したと前述しましたが、じつはウォータールー駅からも行けるルートがあって「シャーロック・ホームズ大事典」の『タヴィストック』の項（執筆　平賀三郎）には、このタヴィストックという町には「ウォータールー駅から出るロンドン・アンド・サウスウェスト鉄道の駅があり、直通列車が走っていた」が「残念ながら、ご多分に漏れぬ英国の鉄道斜陽で廃止されてしまった」と述べられています。 　さらに《孤独な自転車乗り》ではホームズの都合がつかず、ワトスンが一人で先にウォータールー駅からサリー州のファーナムへ向かい、ホームズがあとからこれを追いかけています。そのほか《オレンジの種五つ》では、依頼人のジョン・オウプンショウが帰り際にホームズに「ウォータールー駅から、汽車に乗ります」と言ってサセックス州のホーシャムの自宅に向かいましたが、ついに家には帰り着くことなく、途中で不可解な死を遂げたのであります。《バスカヴィル家の犬》ではダートムアで魔犬に追われ怪死したサー・チャールズ・バスカヴィルの後継者で、甥にあたるサー・ヘンリー・バスカヴィルがカナダから帰国してロンドン入りするときにウォータールー駅に到着し、ダートムアからロンドンへ出てきていた事件の依頼人モーティマー医師がこれを出迎えました。 現在のファーナム駅構内 撮影　柴崎 節子 撮影日2004年12月13日