ホームズ物語には、家庭教師がもう二人登場します。その一人は《ウィステリア荘》に登場するヘンダースン氏の11才と13才の二人の娘の面倒をみていた家庭教師のミス・バーネットであります。このヘンダースンはサリー州のオックスショットに近いハイ・ゲイブル荘というところに住んでいましたが、彼はじつは、かつて「サン・ペドロの虎」と呼ばれ、残虐非道の暴君として悪名高いドン・ムリーリョが失脚後、中央アメリカから逃亡し、英国で身を隠した姿だったのであります。一方、ミス・バーネットは、ドン・ムリーリョに夫を殺された未亡人で、ムリーリョを倒すための結社の一員として、家庭教師になりすまし、ヘンダースンの家庭にもぐり込んでいたのであります。
残るもう一人の家庭教師は《フラーンシス・カーファックスの失踪》で、フラーンシスのかつての家庭教師だった年配の女性スーザン・ドブニーであります。彼女はいつも定期的に手紙をくれていたフラーンシスからの音信が途絶えたのを心配して、ホームズに相談を持ちかけたのでした。彼女の依頼に基づき、多忙でロンドンを離れられないホームズの代理として、ワトスンがフラーンシスの足跡を追ってヨーロッパ大陸に渡ります。やがて手の空いたホームズと合流した二人は、最後にロンドンでフラーンシスを危機一髪のところで救出することに成功するというのが話の粗筋であります。
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列車から逃げ出すミス・バーネット
(アーサー・トゥイドル画）
《ウィステリア荘》部分拡大図 |
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