「ササッサ谷からライヘンバッハの滝までの小説」(ネタバレあり) by関矢悦子
初出誌：『イラストレッド・ロンドン・ニュース』誌(1892年夏号)
初邦訳収録本：『赤ランプ』大正１４(１９２５)年 金剛社刊行
初邦訳題：外交上の問題 桜井邦雄訳
参考邦訳：《外交問題》笹野史隆訳『コナン・ドイル小説全集第３９巻 赤いランプをめぐって 中』収録
《外交問題》の解説と感想
外務大臣：チャールズ
外務大臣の妻：クララ
外務大臣の娘：アイダ
外務大臣の娘の恋人：ロード・アーサー・シブソープ、公爵の四男
首相
掛かり付けの医師：サー・ウィリアム
５月のある日、諸外国との難問の処理が必要なのに痛風の症状がでた外務大臣は一週間も自宅で療養中です。役所には優秀なスタッフはいますが、豊かな経験と明敏さを持っている外務大臣が閣議に欠席した結果、外交問題の処理はすべて停止してしまいました。
大臣はキャヴェンディッシュ・スクエアにある大邸宅に住んでいますが、大臣が座っている部屋は外は春なのに暖炉が焚かれ片足は前に伸ばして台の上に乗せた状態です。
外交問題は山積みなのに、右足のつま先が腫れてるだけでアームチェアに座っているのが我慢出来ません。それで、少し歩いてみると、つま先に灼熱のような痛みを感じ外交問題など考えも出来ない状態です。その外務大臣が窓から見たのは、走り去って行くロード・アーサー・シブソープの馬車です。外務大臣は急いで妻を呼び、来客者が誰と会ったのか聞くのですが、妻には軽くあしらわれて薬の「リチウム粉薬」を飲んでな いことを指摘されます。
外務大臣は妻の指摘にはかまわず、貧乏公爵の四男で定職もないロード・アーサー・シブソープが一人娘のアイダとつき合っていることを非難しますが、妻はすでに二人の間を引き裂くことはできなところまで来ていると、返事をするのでした。
外務大臣夫婦が娘の恋愛問題についての言い争いをしているときに、首相が尋ねて来ました。首相はほとんどの案件が外務大臣が復帰するまで持ち越しだ、と言うと外務大臣は痛風の痛みか薬のコルヒチンのせいなのか頭脳が曇ってしまった、と答えるのでした。
また、首相はモロッコのタンジールに欠員ができたので、恩義ある父親の公爵からの申し出で息子のロード・アーサー・シブソープを任命したいと言うと、外務大臣は娘の恋人をモロッコに追いやることは大賛成なので候補者が多いタンジールの欠員が簡単に決まったのです。
すると、この話を首相から聞いた妻のクララはロード・アーサー・シブソープがモロッコに赴任するまでの一週間で娘アイダが結婚式を挙げてタンジールに同行できるように話を進めたのです。それは、胸を患っている娘のアイダの転地療養地に乾燥しているタンジールが的確だと言う主治医のサー・ウィリアムのお墨付きを少し強引ですがもらい、主治医から夫に薦めてもらうという方法です。
何も知らない主治医は外務大臣にタンジールでの療養を勧め、体調の悪い外務大臣は首相との話を忘れていて、誰が娘と一緒にタンジールに行くか、という話を妻とするのでした。
すると妻のクララはアイダはロード・アーサー・シブソープと一緒に行くと言う衝撃的な事実を教えるのでした。外務大臣は朗報にかけつけた娘婿となるロード・アーサー・シブソープと会うことは拒否しますが、妻に出し抜かれたことに対して「実に見事だ」と言うのでした。これに対しての「三十年間もとても有能な外交官を研究してきたのよ」と妻は夫にキスをしながら答えたのです。
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