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シャーロック・ホームズの世界 | ||
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『シャーロック・ホームズの知恵』に続く著者のシャーロッキアーナ単行本の第二冊。先行本に比べ、主題をしぼり、濃厚な論考をしている。内容は九章からなり、それぞれの概要は以下のとおり。 第一章「ホームズの演出振り」ホームズは演出家で、芝居気や茶目っ 気たっぷりの場面で事件の真相を披露する場面が多い。初期に は骨を折って仕事に取り組んでいるが、後期になると地位が確 立し虚名を嫌うようになった。ホームズにとっては仕事そのも のが報酬で、手柄はほとんどスコットランドヤードのものとした。 第二章「ホームズとコカイン」ホームズはコカインの愛好者であったか 否かを先行研究を引用して検討。 ワトスンは医者の立場からコカインを止めるように進言したが、 ホームズはこれを聞かなかった。 第三章「ホームズと変装」ホームズの変装が現れる作品とその内容。 変装の腕はホームズよりルパンが優るが、それは常識はずれした 巧みさで、まともに取り上げる気がしない。外国には変装につい て取り組んた文献は全くない。 第四章「ホームズと通信」ホームズの通信手段として電話が現れている 例は『唇の曲がった男』『ギリシア語通訳』『退職した絵具屋』 『三人ガリデブ』『高名の依頼人』『白面の兵士』の六編。 その他は電報と手紙で、早く着きすぎるなどの矛盾が多い。 第五章「ホームズとピストル」ピストルはかなり頻繁に登場し、ホームズ はピストルについて深い知識を持っていたが達人ではなかった。 第六章「医学博士ワトスン」ワトソンの医師としての経歴を検討し、なぜ 軍医になったのか謎であると問題提起している。当時の世相では軍 医は医学博士がなるポジションとは考えにくく、ワトソンは青雲客 気で世界を回りたかったのだろうか、としている。 第七章「医師としてのワトスン」ホームズはワトソンを友人としては信頼 していたが、医師としては信頼していなかった。しかし、ワトソン は有能な医師であった事を例をあげて説明。 第八章「ハドスン夫人」ベイカー街２２１Ｂの家主のハドソン夫人の経歴 を検討。彼女はホームズを心から畏敬していた。また、『ライオン のたてがみ』および『最後の挨拶』に出現する家政婦はハドソン夫 人と同一人物か否かを検討。 第九章「酒場シャーロック・ホームズ」1957年にノーザンバラード・スト リートに酒場シャーロック・ホームズが開店した。これは普通の酒 場ではなく、ホームズゆかりの品物を展示しており、その所蔵資料 の目録付。 感想 著者が「前著は……極く入門的な解説めいた……アペリティーフを召し上がっていただくつもり…と書いたが、こんどはスープから魚料理程度までの献立を用意しました」と述べているとおり、論点主題をある程度しぼり、それぞれに前著より深い検討を加えている。前著でシャーロッキアーナに興味を持った読者を、この世界の深みに引き摺り込む力を持つ著作と位置づけられる。この二冊が版を重ねている事実もそれを裏付けている。（松下了平） |
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